研究課題/領域番号 |
15K20067
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
米山 徹 弘前大学, 医学研究科, 助教 (50587649)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 神経周囲浸潤 / EMT / ラミニンレセプター / 前立腺がん |
研究実績の概要 |
前立腺癌(PC)の進展過程において神経周囲浸潤(PNI)と前立腺癌細胞の上皮間葉移行(EMT)および間葉上皮移行(MET)は重要なメカニズムであるが、その詳細な分子機構は解明されていない。本研究では、PCの局所進展の鍵となるPNIに関与するラミニンレセプター(integrin α6およびラミニン結合O型糖鎖: LNBG)の発現調節と癌の浸潤転移に必須であるEMT-MET制御機構との関連性について明らかにする。 2015年度は、前立腺全摘標本を用いた免疫組織化学的検討によってラミニンレセプターの局在、PNIに関する臨床的意義を調査した結果、PNI部位におけるLNBG陰性かつintegrin α6陽性腫瘍の存在は、前立腺癌の生化学的再発の独立した危険因子であることを明らかにした。また細胞生物学的実験から神経周囲に浸潤しやすいPC細胞は、LNBG陰性かつintegrin α6陽性細胞であった。マイクロアレイ解析からラミニンレセプターの発現調節、EMT-MET制御に関連する責任分子を検索した結果、let7i miRNAの発現が神経周囲浸潤能が高いPC細胞で顕著に増加し、細胞生物学的実験からlet7i miRNAがLNBGの合成に関与するβ1,4glucronyltransferase 1(β4GAT1)の発現を抑制し、LNBGの合成を減少させPC細胞の神経周囲浸潤能を亢進していることを明らかにした。 2016年度は、神経周囲浸潤能が高いPC細胞を前立腺に移植したマウスにlet7i miRNA阻害剤投与し、腫瘍形成能、転移能を評価し、摘出腫瘍組織の病理学的評価を行った。その結果、let7i miRNA阻害剤を投与した群で有意に腫瘍形成能および転移能が減少し、腫瘍組織のLNBGの発現が増加した。これらの研究成果をjournal of biological chemistryに投稿中である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2016年度以降の研究実施計画である 1. 前年度までに同定したマウスに上記の前立腺癌細胞を正所性に移植し、増殖したがん組織におけるラミニンレセプターおよびEMT-MET 責任分子の発現とPNI との関連を調査する。 上記のすべての計画が順調に進展し、前立腺癌の神経周囲浸潤能が高い細胞に対するlet7i miRNA阻害剤による抗腫瘍、転移抑制効果がマウスで確認されたという新たな知見が得られ、当初予定していた研究計画をほぼ達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度までに得られた結果で当初の研究計画をほぼ達成できたと考えられる。現在Journal of Biological Chemistryに投稿し、レヴューワーからの質問に対応中である。この過程で新たにlet7i miRNAのβ4GAT1に与える影響の特異性について指摘を受けたため、let7i miRNAがβ4GAT1の発現調節に直接関与しているかどうかのさらに詳細な検討を進め、論文へのアクセプトを目指す。この結果により、前立腺癌の局所進展の鍵となるPNIに関与するラミニンレセプター(特にラミニン結合O型糖鎖: LNBG)の発現調節と癌の浸潤転移に必須であるEMT-MET制御機構に深く関与するlet7i miRNAの機能解明を進める。
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