前立腺肥大症患者の前立腺部尿道に対するα1ブロッカーの作用について、客観的且つ定量的に画像評価する方法は無く、治療効果を有する事は解っていてもそのメカニズムは解明されていないことに対し、千葉大学泌尿器科と工学研究科において、メカニズム解明に向けて、内視鏡画像から得られた情報を基に尿流シミュレーションシステムを開発し臨床応用を行ってきた。研究の最終的な目的は、今まで行ってきた前立腺肥大症患者の前立腺部尿道内の尿流画像解析研究を継続し、前立腺肥大症の責任部位の同定とfocal therapyを目的としたEndourologic surgery assisted systemの開発と位置付けて、尿流の可視化と病態責任部位の同定を目的として、臨床応用を計画と研究を行ってきた。 今年度は、今まで行ってきた内視鏡映像由来の3次元尿流シミュレーションシステムの研究だけでなく、当初研究を共同で開始した千葉大学工学部助教のスタッフ(現在カナダ、ウォータールー大学博士研究員)と共同で高感度エコー画像を用いて、前立腺部尿道内の尿流をとらえる手法も模索し検討してきた。 現在まで行ってきた3次元システムは尿道内視鏡からの画像解析であり、内視鏡から発する光源の光量によってはどうしても誤差が生じてしまっていたが、カナダウォータールー大学の手法であれば、高感度エコーの映像から尿流を可視化することが可能であることから、再現性がより高められる可能性があることが判明した。 そこで、現在までの3次元システムとの誤差なども検出できればと考えたが、日本とカナダでの共同研究であることから、直接対話も数回に留まったため難航した。 また、高感度エコーによる尿流解析の精度は高いながらも画像解析に要する時間が長いことや費用も掛かることから、実臨床に応用するには時間が必要であることも課題となった。
|