研究課題
初期の前立腺癌は、ホルモン感受性癌であるため、アンドロゲンを遮断する治療法により治療効果が望める。しかしながら、多くの前立腺癌は、治療後約2年で去勢抵抗性前立腺癌となり、アンドロゲンを遮断する治療に抵抗性になる事が知られている。去勢抵抗性前立腺癌に対する有効な治療法は乏しく、やがて骨・リンパ節等に転移をきたし患者を死に至らしめる。去勢抵抗性に至る前立腺癌の分子メカニズムや、遠隔転移に関与する分子メカニズムは、未だ十分に解明されていない。ヒトゲノム中には、マイクロRNAと呼ばれる19-23塩基の低分子RNA分子が存在する。マイクロRNAは、機能性RNA (タンパクコード・非タンパクコード)の翻訳阻害や直接分解により、その発現を制御している。前立腺癌に関与するマイクロRNAを見出し、マイクロRNAを起点とした分子ネットワークを探索することにより、前立腺癌細胞に特徴的な機能性RNAネットワークの探索を目的とした。前立腺癌組織で発現が抑制されているマイクロRNAの機能解析から、前立腺癌細胞の遊走や浸潤に関わる「転移抑制型マイクロRNA」を探索した。その結果、miR-29a/b/cが、癌細胞の癌の遊走や浸潤を制御している事を見出した。更に、これらマイクロRNAが制御する転移促進遺伝子を探索した結果、Lysyl Oxidase Like 2(LOXL2)を見出した。LOXL2は、コラーゲンの生合成に関与する遺伝子であり、細胞外マトリックスの肥厚化に関与している。細胞外マトリックスの異常は、癌の転移に関与している事が報告されている。LOXL2の発現を免疫染色法で調べた結果、前立腺癌細胞で高発現している事を認めた。癌細胞でLOXL2をノックダウンすると、前立腺癌細胞の遊走や浸潤が顕著に抑制された。
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