研究課題
前立腺癌は本邦においても罹患率・死亡率とも急激に上昇している。当初はホルモン療法による治療が効果的だが、いずれ抵抗性となり、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)となる。近年、CRPCに対する新規治療薬の登場が見られるが、いずれの治療薬も予後延長効果は数カ月程度と限定的である。CRPCの治療において、癌細胞の進展・転移の制御は重要な課題であるが、その機序の解明は十分にされていない。このような背景の中、申請者は様々な治療に抵抗性を示したCRPC検体について、網羅的マイクロRNA発現解析を行ない、その結果を基に制御機構を解析することで、新たなCRPC進展機構を明らかにしたいと考えた。平成27年度の研究計画としては、CRPC臨床検体に対する次世代シークエンサー解析と、CRPC増殖・進展に関わる新規マイクロRNAネットワークの解明を挙げた。予定通り、CRPC臨床検体よりRNAを抽出し、同時に正常前立腺、未治療前立腺癌組織と同時に次世代シークエンサーを用いて網羅的解析を行なった。結果をバイオインフォマティクス解析し、CRPCにおいて有意に発現低下するマイクロRNAを抽出し、「前立腺癌マイクロRNA発現プロファイル」を作成した。このプロファイルには、ゲノム上で近接し、クラスターを形成するマイクロRNAならびに、これまで機能しないと考えられていたマイクロRNAのパッセンジャー鎖が含まれていることが分かった。これらマイクロRNAがCRPCにおける重要な癌抑制型マイクロRNAの候補であると考えた。前立腺細胞株にマイクロRNAを核酸導入し、そのマイクロRNAが制御する分子ネットワーク解析を継続している。
2: おおむね順調に進展している
CRPCの臨床検体を用いた次世代シーケンサー解析から、CRPCの進展機序解明の手掛かりとなりうるマイクロRNA群を導いた。CRPC臨床検体は比較的入手困難であるが、今回の解析により、今後のスタンダードとなる「前立腺癌マイクロRNA発現プロファイル」を作成した。これらマイクロRNA群を基に、制御する分子ネットワーク群の探索とその制御する遺伝子のCRPCにおける機能探索が可能となり、今後の研究の方向性が示唆される。
当初の研究計画通り、マイクロRNA-mRNAの分子ネットワークからの標的分子選択ならびにARを介さないCRPCの増殖・進展シグナル伝達系の探索を行う。1つのマイクロRNA は多くのmRNAを制御しており、逆に1つのmRNAは多くのマイクロRNAにより制御を受けている。すなわち、起点となるマイクロRNAを探索することで、CRPCにおける進展の鍵となる新規分子・シグナル伝達系を探索できると考えている。さらに、上記シグナル伝達系を阻害する低分子核酸(miRNAまたはsiRNA)もしくは既存の低分子化合物、分子標的薬などの探索を行ない、革新的なCRPC治療に結びつくような基礎的知見を得たいと考えている。
研究試薬の節約が可能であったため。
標的分子機能解析の際の試薬代に加算する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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