研究実績の概要 |
前立腺癌細胞株 (LNCaP, PC3, DU145)を用い、ウエスタンブロット法でSTAT1の発現を解析し、アンドロゲン依存性であるLNCaPと比較して、非依存性であるPC3, DU145ではSTAT1の発現が高いことを確認した。さらにアンドロゲン投与によりアンドロゲン非依存性に変化させたLNCaPではSTAT1発現が増加した。ゾレドロン酸によるSTAT1発現阻害をウエスタンブロット法、放射線増感作用をclonogenic assay、化学療法 (ドセタキセル)増感作用をMTS assayおよびcombination index法で評価したところ、ゾレドロン酸はプロテアソームを介した蛋白分解によりSTAT1発現を蛋白レベルで低下させ、放射線療法・化学療法の増感作用を示した。さらに、STAT1ノックダウンおよび過剰発現により、ゾレドロン酸による放射線および化学療法増感作用がSTAT1阻害を介したものであるかを検証し、ゾレドロン酸による治療増感効果は、DU145に対するSTAT1ノックダウンでも再現され、一方、LNCaPにおけるSTAT1過剰発現は放射線治療、化学療法いずれにおいても治療抵抗性を増強させることを確認した。本研究により、ゾレドロン酸はSTAT1阻害を介して去勢抵抗性前立腺癌の化学療法・放射線療法感受性を増強することを証明した。ゾレドロン酸は、すでに前立腺癌骨転移の治療薬として汎用されており、本研究の成果はすぐに臨床応用が可能である。しかし、ゾレドロン酸の化学療法・放射線療法感受性増強が臨床レベルでも有用であるかは検証が必要である。
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