研究課題
ABO血液型不適合移植において、「抗ドナー血液型抗体が血液中に存在しても拒絶反応が起こらない、すなわち抗原と抗体が共存しているが抗原抗体反応が起こらない、Accommodation(免疫学的順応)が成立する、という事実」が明らかになったが、その誘導・成立メカニズムは未だ謎につつまれている。ABO血液型抗原には多くのサブグループがあり、抗血液型抗体もポリクローナルであるが、ABO不適合腎移植における抗原・抗体の多様性については検討されたことがない。本研究の目的は、『ABO不適合腎移植におけるABO血液型抗原と抗ドナー血液型抗体の多様性について解析し、抗原と抗体が共存できるメカニズムを追究する』ことである。我々は、研究協力者である産業技術総合研究所の糖鎖創薬技術研究センターの協力を得て、A型、B型のtype 1-4のsubstructure合成糖鎖抗原を固相化した糖鎖アレイを開発し、実際の腎移植患者血清を用いて、ABO不適合腎移植前後の抗A抗体、抗B抗体の解析を行った。ABO不適合腎移植後はtype 2血液型抗原に対する抗体が減弱する傾向があることが分かった。また、免疫染色法により腎血管内皮細胞のA抗原、B抗原のsubstructureはtype 2がメインであることが示唆された。次に、腎血管内皮細胞でABO糖鎖抗原を所持するタンパク質がCD31であることを利用して、CD31にA、B糖鎖抗原を発現させたリコンビナント糖タンパク質を合成し、糖タンパクアレイを開発した。少数例の検討ではあるが、ABO不適合腎移植後の患者血清を使用し、ドナー血液型抗原に対する抗A抗体、抗B抗体の反応を解析した結果、ABO不適合腎移植後、拒絶反応が起こらない患者の血清は非常に弱い反応を示した。赤血球を使用した凝集反応は陽性であっても、腎家間内皮細胞を模倣した我々のCD31糖タンパクアレイを用いた解析では、抗体が腎臓に反応しないことが示唆された。これがAccommodationのメカニズムである可能性がある。
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Am J Transplant.
巻: 1 ページ: 115-128
10.1111