近年、低活動膀胱が注目されて来ている。低活動膀胱の発症機序としてもっとも支持されている仮説が動脈硬化であり、膀胱(骨盤内臓器)の血流障害は過活動膀胱を発症させ、さらに血流障害が進行すると低活動膀胱に移行するという考えである。しかし過活動膀胱と低活動膀胱の関連に関する詳細な機序は不明なままであり、本研究は過活動膀胱による頻回の排尿筋収縮(膀胱内圧の上昇)自体が低活動膀胱の原因となり得ないか、検討した。 雌性Sprague-Dawley (SD) ラット10 週齢を用いて尿路上皮の知覚亢進による過活動モデルを作製している。SDラット膀胱の頂部から薬剤注入用のカテーテルをハロタン麻酔下に留置し、浸透圧ポンプを用いてプロスタグランディン(PG)E2またはカルバコール(CCh)を膀胱内に持続注入した。排尿反射を誘発する膀胱内注入薬剤としては予備実験の結果からCChが適しており、種々の濃度で実験を行いCCh 1 nmol/時間が代謝ケージで測定した排尿回数から至適な時間当たりの投与量と判断した。当初、6ヶ月間の長期投与を予定していたが、薬剤注入ポンプ埋め込み後4週間で注入ポンプによる皮膚のびらんが生じるラットを認めたため実験は4週間を目安にして行った。CChの膀胱内注入によって頻尿となり、注入開始後4週間で膀胱を摘出した。膀胱重量は約2倍になり、膀胱壁の肥厚を認めた。組織バス実験では膀胱条片のCCh収縮、高カリウム収縮、電気刺激による収縮力は条片当たりでは膀胱内CCh注入ラット(膀胱知覚刺激による過活動膀胱モデルラット)で収縮力の亢進を認めたが、重量単位では有意な収縮力の低下を認めた。膀胱知覚刺激による過活動膀胱が膀胱収縮力の低下、長期的にみれば低活動膀胱の原因となることが示唆された。
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