研究実績の概要 |
ヒトにおいて尿が前立腺導管内に逆流し非細菌性前立腺炎の原因となることが知られているが、この機序による炎症について詳細に検討した研究は限られている。以前、我々はラットの尿を外尿道口より注入すると前立腺導管内に逆流し、非細菌性前立腺炎が引き起こされることを確認しているが(未発表)、本研究ではヒトの尿に組成が類似しており様々な研究に使用される人工尿(200 mM urea, 1.0 mM uric acid, 4.0 mM creatinine, 5.0 mM Na3C6H5O7, 54.0 mM NaCl, 30.0 mM KCl, 15.0 mM NH4Cl, 3.0 mM CaCl2, 2.0 mM MgSO4, 2.0 mM NaHCO3, 0.1 mM Na2C2O4, 9.0 mM Na2SO4, 3.6 mM NaH2PO4, 0.4 mM Na2HPO4, pH 6.2)を用いて、非細菌性前立腺炎モデルの確立を目指した。 雄性ラットの外尿道口より人工尿500μLを注入すると一部が前立腺導管内に逆流し、炎症を惹起することが確認できた。人工尿に高濃度で含まれる尿酸が、炎症の惹起に関与していることが明らかとなった。CCDカメラにて前立腺表面の微小循環を評価すると、人口尿注入群では前立腺表面の血流障害が起きていた。また膀胱内圧測定にて排尿間隔の短縮が確認された。これらの特徴は、臨床での非細菌性前立腺炎と共通点をもつ。 次年度はPDE5阻害薬を投与し、その効果を確認する予定である。
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