当研究にて低活動膀胱モデルラットに脂肪由来幹細胞を膀胱壁内に局所注入し、膀胱における組織血流の増加ならびに幹細胞の平滑筋への分化を確認するとともに、膀胱収縮機能の評価を行うことで、幹細胞注入による膀胱機能改善作用およびその機序について組織学的・機能学的に検討した。 モデルの作成:これまで最適なモデルがなかったが、当研究では、膀胱過伸展モデルラットを作成し、ノーマル群と比較して膀胱機能の低下を確認し、モデルとして使用した。ノーマル群、低活動膀胱モデル群(対照群)、低活動膀胱モデルに脂肪幹細胞投与群(治療群)にわけて研究を行った。組織学的検討結果:治療群は対照群と比較して粘膜、筋層の肥大の改善ならびに組織の線維化の改善を確認した。さらにCellVue® Claretによりマークした脂肪幹細胞が、平滑筋、血管内皮、神経に分化したことを確認した。機能学的検討結果:膀胱内圧測定にて対照群と比較して、有意な膀胱機能の改善(残尿の低下、排尿効率の改善)を確認した。さらに摘出膀胱収縮弛緩試験にて、電気刺激、薬物刺激に対する有意な膀胱の収縮を確認した。 以上の結果より、低活動膀胱モデルにおける脂肪幹細胞の局所注入は、自身の平滑筋分化だけでなく、周囲組織の線維化や炎症の改善にもつながることが考えられ、また機能学的側面からも膀胱機能の改善が得られており、今後の自己脂肪由来・非培養幹細胞の膀胱内注入療法の低活動膀胱の治療選択肢としての可能性が見出される結果であった。
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