研究課題
ヒト正常組織で見られていたEPAC1、EPAC2の発現がガン組織では著明に低下することを見出している。さらに、膀胱上皮癌由来細胞株UMUC-3,KK47細胞においてもEPAC1、EPCA2の発現低下を確認している。これらの癌細胞に欠損したEPAC1の発現をレンチウイルスベクターにより戻すと、癌形質の一つである移動性の低下を示した。さらなる解析で細胞間接着が増加していることを認めた。そこで、EPACの特異的な活性化を誘導する8-pCPT-2'O-Me-cAMPを培地に添加後、形態変化について解析を行ったが、8-pCPT-2'O-Me-cAMP存在の有無にかかわらずEPAC1を発現する細胞株は移動性の低下を示した。さらに、EPACの下流で活性化されることが知られているRap1の活性化について検討を行ったところ8-pCPT-2'O-Me-cAMPの有無にかかわらずRap1もまた活性化されていることが明らかになった。一方、コントロール細胞においては8-pCPT-2'O-Me-cAMP存在下でもRap1活性は起こらなかった。次に、EPAC1発現による増殖能への影響について検討を行ったが、コントロール細胞と差は認められなかった。8-pCPT-2'O-Me-cAMP存在下での増殖能も解析したが、EPAC発現細胞とコントロール細胞との間に有意な差は認めなかった。以上のことから、EPAC1の発現が癌細胞の増殖ではなく主に形質に影響を及ぼしていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究室の移動に伴い遅れていたが、ようやく実験環境が整いおおむね順調に進んでいる。
これまで得た結果から、ヌードマウスを用いた担癌モデルの実験を行い、EPAC発現により抑制された癌細胞の移動性がin vivoにおいても維持されるのかどうかを明らかにする。さらに、癌細胞でEPAC発現が低下するメカニズムについてエピジェネティックな解析を行っていく。
大学を移動したため、実験環境の立て直しを行い、年度後半より本格始動を開始したため、予定より使用額の低下が生じた。
28年度の研究がおおむね順調に進んできたので、29年度は残りの予算を用いてマウスを中心としたin vivoの解析を行う。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Annals of Oncology
巻: 28 ページ: 569-575
https://doi.org/10.1093/annonc/mdw646
Journal of the National Cancer Institute
巻: 108 ページ: -
https://doi.org/10.1093/jnci/djw005
Pathobiology
巻: 83 ページ: 277-286
https://doi.org/10.1159/000445752
Cancer Science
巻: 107 ページ: 1022-1028
10.1111/cas.12948