研究課題/領域番号 |
15K20099
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
前鼻 健志 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (30718002)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Heat shock protein 90 / HSP90阻害剤 / 臓器・組織移植 / 拒絶反応 |
研究実績の概要 |
腎移植患者31例の患者血清を解析した。急性拒絶反応症例は16例で発症しており、T細胞性拒絶反応ならびに抗体関連型拒絶反応発症時の血清HSP90濃度は、拒絶反応非発症時に比べ、有意に高値であった。またこれらの症例では、拒絶反応治療後に血清HSP90濃度が減少する傾向を示した。慢性抗体型拒絶反応症例、カルシニューリン阻害薬による腎毒性症例、BKウイルス腎症症例での血清HSP90濃度の解析も行ったが、拒絶反応非発症症例と比較し有意な上昇は認めなかった。さらにマウスMHC不一致皮膚移植モデルを作成し、拒絶反応時の血清HSP90を解析した結果、移植前と比較し有意な上昇を認め、二次移植後拒絶反応発症時の血清HSP90値は一次移植拒絶反応時よりさらに上昇していた。よってHSP90が拒絶反応の発症に関与している可能性が示唆されるとともに、急性拒絶反応の新規バイオマーカーになり得ると考えられた。
次にマウス同種皮膚移植モデルを作成し、移植前からHSP90阻害剤であるgeldanamycin 誘導体を投与し、コントロール群との生着期間を検討した結果、HSP90阻害剤投与群で有意に生着が延長し、移植片への細胞浸潤も有意に低下した。さらに二次皮膚移植モデルにおいても有意に生着期間が延長した。
以上のことから、急性拒絶反応の発症にはHSP90が重要な役割を持っており、これを阻害することで発症・進行を抑制する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者検体の収集が順調であり、解析結果でも期待された内容が得られた。また実験モデルの作成も想定した通りの結果が得られ、これを元に研究を進めることが出来た。研究器具の準備において資金面で苦慮することがなかったため、効率よく実験をおこなうことが可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
マウス皮膚移植モデルにおいて、HSP90阻害剤による生着延長効果の機序を解明するために、血清・皮膚グラフトサイトカインの測定、フローサイトメトリーによるリンパ球サブセット解析などを行う。
マウス臓器移植モデル(心移植など)において、血清および免疫細胞におけるHSP90の変化を評価し、またHSP90阻害剤の拒絶反応抑制効果を検証する。
ドナーの組織・臓器をHSP90 阻害剤を混注した灌流液を作成し生体外灌流を行ったのち移植を行い、HSP90 阻害剤無処置移植群との生着期間の比較を行うことで、ドナー組織・臓器における臓器灌流液のHSP90阻害剤処理によるHLA抗原発現抑制効果の検討を行う。
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