研究課題
精子形成の初期過程である、未分化細胞から精子幹細胞への分化にKdm5aが関与することを、私たちは報告してきた。Kdm5aはヒストン脱メチル化酵素であり、エピジェネティックに遺伝子発現制御を行う。さらに造精機能障害モデル動物であるラット停留精巣のみならず、ヒト停留精巣でもKDM5Aの発現が亢進し、精細胞分化に関与することが示された。そこで、培養細胞を用いたChIP-assayにより精細胞分化機序について検討した。Kdm5a-Gfp発現ベクターを作成し、マウス精原細胞の培養株であるGC-1細胞へリポフェクション法により遺伝子導入を行った。セルソーティングによりGfp陽性細胞を分離した。(1)Kdm5aの発現強度によって変化する遺伝子をマイクロアレイ解析、IPA解析で探索した。また(2) ヒストンH3K4抗体を用いたChIP-assayにより、精細胞分化に関連する遺伝子の発現定量を行った。(1)マイクロアレイ解析結果で、Kdm5a強発現によりTet1、Scml2遺伝子の発現亢進、Wnt1、Sox6、Sox8遺伝子の発現低下を認めた。 (2) H3K4me3抗体を用いたChIP-assayからKdm5a強発現によってRet遺伝子の発現が亢進していた。Kdm5aを精原細胞内で強発現させるとエビゲノム関連遺伝子Tet1や性腺発生に関与するSox6、Sox8遺伝子の発現変化を認めた。またKdm5aのヒストン脱メチル化によりRet遺伝子の発現が亢進していた。これらのことから、Kdm5aはヒストンH3K4を脱メチル化し複数の遺伝子発現を同時に制御することで、精子形成の初期過程である細胞分化に関与することが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
Urology Case Reports
巻: 13 ページ: 26-27
10.1016/j.eucr.2017.03.012