申請者は、AR axisとPI3K/ Akt/mTOR axisとのクロストークに加えSTAT5 axisが難治性前立腺癌への進展に寄与するのではないかと考え検討を行った。当実験において、ホルモン感受性前立腺癌細胞株LNCaPおよび当教室において樹立した去勢抵抗性前立腺癌細胞株C4-2AT6を使用した。細胞増殖アッセイにより、C4-2AT6はドセタキセル耐性を有しているが、Western blot法では、C4-2AT6においてドセタキセル投与後にAktシグナルの増強を認めていた。STAT5阻害剤などは、ドセタキセルとの併用投与において、C4-2AT6のドセタキセル感受性を回復させた。ドセタキセル投与によるSTAT5シグナルについては引き続き、それらの構成因子の発現の解析を進めているが、相互依存的制御機構の存在が示唆された。申請者はCRPCに対するSTAT5阻害剤を独自にスクリーニングし、候補薬をスクリーニングしている。現在までに、候補薬ME001を同定した。C4-2AT6の細胞増殖を有意に抑制した。ME001の抗腫瘍効果を検討するため、C4-2AT6の皮下腫瘍モデルを作成し、ME001を投与したところ、有意な腫瘍縮小効果を認めた。今後さらにメカニズム解析を進めていく予定である。 ARシグナル経路との相互依存的な制御機構を検討するため、新規アンドロゲン受容体拮抗薬であるエンザルタミドを用いて検討を行った。C4-2AT6はエンザルタミドに対して完全耐性を有しており、PI3K/ Akt/mTOR シグナルおよびSTAT5シグナル阻害剤の併用投与によって感受性を回復させることができず、これらのシグナル経路はエンザルタミドに対する耐性化への寄与は限定的であると考察された。 。
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