研究課題/領域番号 |
15K20110
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
丹羽 直也 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40626743)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 尿路上皮癌 / 抗がん剤耐性 / がん微小環境 |
研究実績の概要 |
転移・再発性尿路上皮癌における標準治療はシスプラチン(CDDP)を基盤とした多剤併用化学療法である。一時的に奏功を得る症例があっても、大部分はその後進行する。現時点でそのような抗がん剤耐性を獲得した癌に対する有効な治療法は存在しない。我々はCDDP耐性の尿路上皮癌に対する新規治療アプローチとして、抗がん剤治療によって誘導されるがん微小環境の変化およびその誘導因子に着目した。当教室ではこれまでに泌尿器科癌において血管新生や上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition: EMT)を中心としたがん微小環境変化について検討を重ねてきた。本研究では、アレイ解析より抽出したTNF-α誘導タンパクであるTNFAIP2の発現上昇とがん微笑環境の制御に注目した。 慶應義塾大学病院における上部尿路上皮癌のデータベースをもとに、手術治療が施行された腎盂尿管癌患者(N=60)の臨床検体を用いた検討では、TNFAIP2高発現と術後再発・予後に相関があった。また、Western blots法を用いてCDDP耐性獲得した尿路上皮癌細胞におけるTNFAIP2の発現上昇を確認、また細胞染色においても細胞質でのTNFAIP2の発現上昇を確認した。これらの結果から、CDDP耐性下におけるTNFAIP2の発現上昇を介してがん微小環境が変化することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度はまず、慶應義塾大学病院における尿路上皮癌のデータベースを基に、臨床検体を用いて免疫組織学的染色によるTNFAIP2の発現と血管新生、EMTを検討した。予備的検討から臨床検体数を大幅に増加させて検討したが、同様にTNFAIP2の発現と術後再発・予後に相関を認めた。 CDDP耐性尿路上皮癌細胞癌細胞株5637PR細胞を用いてIn vitroの解析を行った。TNFAIP2ノックダウン・過剰発現に伴う血管新生/EMT関連因子の発現抑制・亢進が確認され、がん微小環境の制御因子としてのTNFAIP2の可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
1)TNFAIP2の標的器質の同定:TNFAIP2下流カスケードの解析を行う予定である。TNFAIP2ノックダウンと過剰発現の縦断的変化を利用した絞り込みアレイ解析を行い、TNFAIP2の標的器質となる分子のスクリーニングを行った。今後それらの中から候補となりうる分子を抽出、TNFAIP2との関連について検討していく予定である。 2)In vivo (マウス皮下腫瘍モデル)でのTNFAIP2制御発現による抗腫瘍効果の検討:In vivo(皮下腫瘍モデル)でのTNFAIP2発現制御による抗腫瘍効果の検討を行う予定である。xnograft modelを確立し、そのうえでTNFAIP2の発現制御による抗腫瘍効果の検討を行う予定である。
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