研究課題
上皮間葉転換(EMT)は癌の浸潤転移に深く関与しており、シスプラチン(CDDP)耐性尿路上皮癌においても重要な治療標的である。本研究ではTNFα誘導蛋白であるTNFAIP2に着目し、CDDP耐性尿路上皮癌におけるTNFAIP2の発現上昇を介したEMT誘導のメカニズムを明らかにした。本年度はTNFAIP2の発現を介したEMT制御機構の解明に注力した。尿路上皮癌細胞株5637から誘導されたCDDP耐性尿路上皮癌細胞株5637PRへのSiRNA法によるTNFAIP2ノックダウンでは、TNFAIP2の発現低下に伴いE-カドヘリンの発現上昇およびEMT関連因子の発現低下が確認された。更に尿路上皮癌細胞株5637へのプラスミドDNAを用いたトランスフェクション法によるTNFAIP2の過剰発現では、TNFAIP2の上昇に伴いE-カドヘリンの発現低下およびEMT関連因子の発現上昇が確認された。これらの結果からTNFAIP2上昇を介したEMT誘導機構の存在が明らかとなり、かつTNFAIP2を制御することでEMT誘導を制御できる可能性が示唆された。ヒト尿路上皮癌組織検体を用いた検討では、TNFAIP2の発現は既存の病理学的Grade並びに深達度と強く関連していること、TNFAIP2発現上昇群では術後の再発率や死亡率が有意に高いことが確認された。術前化学療法がおこなわれた尿路上皮癌組織検体を用いたCDDP治療前後の比較検討では、CDDP治療後ではTNFAIP2の発現が低下およびE-カドヘリンの発現が上昇する傾向にあることが確認され、CDDP治療に伴いTNFAIP2の発現が上昇することがヒト尿路上皮癌組織でも一般化された。
すべて 2016 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Clinical Genitourinary Cancer.
巻: 14 ページ: e501-e507.
10.1016/j.clgc.2016.04.018.
Journal of Clinical Investigation Insight.
巻: 1 ページ: e83564.
10.1172/jci.insight.83654.
http://www.keio-urology.jp/