研究課題
本年度は昨年度に同定・解析したアンドロゲン応答遺伝子: androgen responsive gene(以下ARG)が前立腺癌細胞内においてどのような機能を有し役割を担っているかについて解析、検討を行った。詳細なARGの機能を解析するためARG安定過剰発現細胞株(以下Stable細胞)をAR陽性前立腺癌細胞株より樹立し、まず初めに細胞増殖能や遊走能に与える影響について検討した。Stable細胞及びcontrol細胞を用いてvehicle処理群、DHT投与群で比較検討したところ、細胞増殖能ばかりでなく遊走能もStable細胞において有意に亢進していることが見いだされた。またこのARGに対する配列特異的なsiRNAを用いてARGの発現抑制系における細胞増殖能や遊走能に与える影響について検証したところ細胞増殖能及び遊走能どちらも有意に抑制されることが確認された。さらに臨床病理検体(ヒト前立腺癌組織及び正常前立腺組織)を用いてARGの免疫組織化学染色を行い検討した。ヒト前立腺癌組織におけるARGの発現は正常前立腺組織と比較して有意に高発現であった(P = 0.0039, Wilcoxon signed rank test)。この結果はOncomine data base上で確認できる解析結果と同様の結果であった。このARGのアンドロゲン依存的な発現上昇は前立腺癌細胞内で有意に認められ、細胞増殖能や遊走能の亢進に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。これらの結果から治療抵抗性獲得機序や抗癌剤耐性化に関わる重要な因子である可能性、また予後予測因子などの分子マーカーとしての臨床応用の可能性が示唆され、今後のさらなる機能解析が期待される。
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