研究課題/領域番号 |
15K20121
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
北村 茜 東北大学, 医学系研究科, 技術補佐員 (50736402)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヒト胎盤発生 / CDX2 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
胚盤胞では、内側の胚体細胞系列(内部細胞塊:ICM)と外側の胚体外細胞系列(栄養外胚葉:TE)に区別される。マウスでは、TEへの細胞分化には、Cdx2が必須の蛋白である事が知られている。しかし、ヒト胚盤胞期では、CDX2の遺伝子発現は低く、ヒトCDX2の機能は明らかではない。本研究では、独自に樹立したヒト分化誘導型胎盤栄養膜幹(TS)細胞モデルを利用し、ヒトCDX2遺伝子の発現とエピジェネティックな分子機構および分子間相互作用について解析する。 平成29年度は、ヒトTS細胞を樹立させ(Okae et al. Cell Stem Cell. 2018)、長期間維持することに成功している。この細胞は、生体の細胞と遺伝子発現やエピジェネティックな状態が類似しているので、CDX2遺伝子プロモーター領域について、DNAメチル化はBisulphite-PCR法で、ヒストン修飾はChip-Seq法にて解析を行なった。また、ヒト胎児性幹細胞(ES)でも同様の解析を行った。その結果、CDX2遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化は、低メチル化状態で、ヒストン修飾も活性型で有意な変化を認めた。一方、胎児性幹細胞(ES)では高メチル化状態を維持していた。この結果は、メチル化阻害剤を添加して再確認した。これらの結果より、ヒトES とTSの分化過程には、マウスと同様にCDX2遺伝子のエピジェネティックな分子機構が作用し、胎盤系列への細胞運命決定に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は産休のため、平成28年度より本研究は開始した。上記の如く、平成28年度の研究実施計画として「ヒトTS細胞株を用いたCDX2遺伝子の機能と分子間相互作用」について、ほぼ予定通り終了した。また、ノックダウン用siRNAは複数統計して、準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は以下の項目について、分子生物統計学的な検討を行う。 ①Cdx2/ CDX2遺伝子調節領域の分子特性について: ヒトTS細胞においてCDX2の発現を調整する領域や遺伝子について、生物情報学的解析を行い、その特徴を明らかにする。具体的には、GO(遺伝子オントロジー)に基づく遺伝子機能の分類、パスウェイ解析、モチーフ配列解析、染色体上の位置やクラスター形成の有無の解析などを行う。解析には、DAVID(Database for Annotation, Visualization and Integrated Discovery)をはじめとする種々のデータベースおよび、統計解析ソフトRを使用する。特に、胎盤発生に重要であると考えられる遺伝子については、ヒト栄養膜細胞株で阻害剤や遮断抗体を用い、CDX2の遺伝子制御機構および機能解析を行う。 ②異種動物間(ヒト、マウス)でのCDX2の機能的保存性についての検討: 胎盤を有する哺乳類は胎盤の形態を変えて進化する。CDX2の保存性は、胎盤における生物学的重要性を意味する。胎盤組織構築の違いがCdx2の構造上の違いを表すことも考えられる。Cdx2/ CDX2のマウス、ヒト間の分子機構と調節分子の相違点を明らかにし、哺乳類の胎盤の進化における役割について検討する。
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