研究課題/領域番号 |
15K20125
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
清野 学 山形大学, 医学部, 医員 (40594320)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 卵巣がん / c-Jun / JNK / 化学療法抵抗性 |
研究実績の概要 |
比較的シスプラチンおよびパクリタキセルに対して耐性を持つヒト卵巣がん細胞株を用いて検討を行った。これらの細胞においてc-Junが薬剤耐性に関与するか検討を行った。まずはじめにc-Junの機能を抑制した際に化学療法耐性を減弱させるか検討を行った。c-Junの機能を抑制する方法としてc-Junに対するsiRNAを細胞に導入しc-Junの発現を抑制することにした。c-Junの発現を部分的に抑制した状態でシスプラチンを処理したところ、予想に反してc-Junの発現を抑制した細胞でPARPの切断量が減少した。つまり卵巣がん細胞においてc-Junの発現を抑制した状態ではシスプラチンによる細胞死を抑制される可能性を示唆するものであった。この結果は我々の仮説を支持しない結果であり、今回のc-Jun抑制ではシスプラチンに対する耐性を減弱しなかった。 そこでc-Junをリン酸化するc-Jun NH2-terminal kinase (JNK)に着目した。予備実験ではJNK阻害薬であるSP600125(以下SP)を用いてJNK活性を抑制するとc-Junの発現量が低下することが分かっている。そこでSPを用いて卵巣がん細胞のc-Jun発現を抑制することにした。我々の仮説通り、卵巣がん細胞株にSPとシスプラチンを同時に用いることでシスプラチンの抗腫瘍効果を増強させた。一方、SPとパクリタキセルを同時に用いると逆に抗腫瘍効果を減弱させたが、JNK阻害薬を前処理した後にパクリタキセル処理(逐次処理)を行うとパクリタキセルの抗腫瘍効果を増強することを見出した。同様の逐次処理をSPおよびシスプラチンで行ったところパクリタキセルと同様にシスプラチンの抗腫瘍効果を増強させた。このことからJNK活性は卵巣がんの化学療法抵抗性に必要であることが示唆されたが、シスプラチンおよびパクリタキセルにより誘導されるストレス応答性JNK活性化とは異なった役割を担っている可能性も考えられた。以上の結果を国際誌であるOncology Reportsに投稿・受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時点で得ていた予備実験結果を踏まえて研究した結果、仮説を支持する結果がin vitroで得られ論文投稿に至っている点から、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は卵巣がん治療モデルマウスを作製するため、卵巣がん移植モデルマウスを用いて、JNK阻害薬とシスプラチンないしパクリタキセルの同時投与で抗腫瘍効果を増強させるか検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度はin vitroでの実験を行っており、本年度はin vitroの実験と並行して動物実験を予定している。試薬購入費および動物購入とそれらの経過観察が長期に渡ることが予想されるため、その飼育費などが主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
上記にも記載した通り、試薬購入および動物購入、動物飼育費として主に使用する。また、本年度に得られた結果をさらに発展させるための試薬購入などに使用する予定である。
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