【目的】昨年度同様レチノイン酸のラット卵巣顆粒膜細胞におけるプロゲステロン産生への全トランス型レチノイン酸(以下、ATRA)の影響につき検討した。【方法】昨年度の研究では (1)この培養系における各因子のmRNA発現 (2)培養液中のプロゲステロン量 (3) StAR mRNA、Cyp11a1 mRNA、3βHSD mRNA発現(4)細胞内cAMP濃度を測定した。今年度はこれらに加え、シグナル伝達機序を観察すべく、(5)Western blot法を用いてCREB(cAMP response element binding protein)のリン酸化を測定した。また(6)H89(PKA inhibitor)を共添加した時の上記変化につき観察した。【結果】これまでの研究では(1)本培養系におけるRARα mRNA、RARγ mRNA、RXRα mRNA、RXRβ mRNA、RALDH1 mRNAの恒常的発現およびRARβ mRNAのATRA投与による発現誘導 (2) ATRA投与によるプロゲステロン量産生増加(3) ATRA投与によるStAR mRNAとCyp11a1 mRNAの発現増強 (4) ATRA投与による細胞内cAMP濃度の増加 という結果が得られていた。今年度の研究により(5)ATRA投与によるCREBをリン酸化(6)ATRA投与によるStAR mRNAとCyp11a1 mRNAの発現増強、H89による培養液中プロゲステロン量増加の抑制という結果を得た。【考察】レチノイン酸は、顆粒膜細胞においてcAMP pathwayを介してプロゲステロン産生を増加させることが示された。 同研究の結果は、Biochemistry and Biophysics Reports 8(2016)62-67に掲載された。
|