研究課題/領域番号 |
15K20127
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
河原井 麗正 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (90634957)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 新生児脳性麻痺 / 低酸素性虚血性脳症 / プロゲステロン / 神経ステロイド / 新治療法 |
研究実績の概要 |
本研究の実験結果から、プロゲステロンは脳性麻痺新生仔ラットに対し、治療薬となり得る可能性が示された。 妊娠母獣ラットを開腹し、子宮動脈を一時遮断して胎仔に低酸素性虚血性脳症を起こし、その母獣から出生した新生仔ラットを脳性麻痺モデルとした。sham(その母獣は子宮動脈の遮断をされていないので、胎仔は低酸素性虚血性脳症は起きていない)モデルと比較すると、脳性麻痺モデルでは生後50日齢でのロタロッド試験で協調運動機能の低下が見られた。脳組織を光学顕微鏡で観察すると、大脳皮質や海馬CA1領域での層構造の乱れや細胞数の低下が確認された。電子顕微鏡では、脳性麻痺モデルの神経軸索やミエリン鞘の破壊が確認された。 脳性麻痺モデル新生仔ラットにプロゲステロンを生後9日目まで連日皮下投与(0.1mg/day)した。これを『治療群』とした。『対象群』は、脳性麻痺モデルにプロゲステロン製剤の溶媒であるセサミオイルを投与されたラットとした。50日齢でロタロッド試験と脳組織の観察をおこなった。『治療群』は『対象群』と比較し、ロタロッド試験では協調運動の改善が見られた。それはshamモデルと同様のレベルまで回復していた。また、大脳皮質や海馬CA1領域の観察では、『治療群』は『対象群』よりも層構造は保たれ、細胞数は多かった。神経の軸索やそれを囲むミエリン鞘も、『治療群』の方が『対象群』よりも明らかに構造は形成されており、shamモデル群のと同様のレベルであった。プロゲスチン製剤であるmedroxyprogesterone acetateでは、ロタロッド試験を改善させなかった。今後、プロゲステロンの代謝産物であるアロプレグナノロンを用いて、プロゲステロンと同様の効果が得られるか、実験をする予定である。 以上の結果から、プロゲステロンは新生児脳性麻痺の新規治療薬となる蓋然性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラット新生仔脳性麻痺モデルに対するプロゲステロンの効果は本研究の実験で示されている。その成果を平成28年1月15日に日本ステロイドホルモン学会学術集会(開催)で口演することができた。また、平成28年4月24日には、日本産科婦人科学会学術講演会でも本研究の成果を口演する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を論文にまとめ、更には臨床応用に向けて、プロゲステロンの投与経路や投与量を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額が少額であり、ラット脳組織の、光学または電子顕微鏡による観察を行うための外部検査機関への試料作成委託ができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度予算とあわせ、外部の検査機関へ試料の作成を委託し、得られたラット脳の標本作成を引き続き行う。
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