研究課題
ヒストンメチル化はエピジェネティクスを制御する主要因子であると考えられている。また乳癌や白血病、膀胱癌、食道癌等の様々な癌において様々なヒストンメチル化酵素、脱メチル化酵素が過剰発現されていることが報告されているが、卵巣癌・子宮体癌などの婦人科癌とタンパク質メチル化について調べた報告はほとんど無い。そこで申請者らは卵巣癌・子宮体癌におけるタンパク質メチル化の意義を調べ、新たな分子標的治療薬の開発を目指した研究を計画した。まず晩婚化や少子化、生活習慣病のなどのリスク人口の増加に伴い、罹患者数も年々増加している子宮体癌における検討から行った。まずリアルタイムPCR法にて子宮体癌細胞株(11種類)、子宮体癌臨床検体(50例)における14種類のヒストンメチル化酵素・脱メチル化酵素の発現解析を行った。それぞれ不死化子宮内膜細胞株及び正常子宮内膜と比較して5種類のヒストンメチル化酵素、3種類のヒストン脱メチル化酵素において有意に発現の亢進が認められた。その中で、まずヒストンメチル化酵素EZH2について機能解析を行った。子宮体癌細胞株に対してsiRNA法によりEZH2をノックダウン後、細胞増殖試験を行ったところ、コントロールと比較しEZH2をノックダウンした細胞株において有意に細胞増殖が抑制された。次にFACS法、AnnexinV法を行ったところ、EZH2をノックダウンした細胞株においてアポトーシス細胞の増加が認められた。また申請者はヒストンメチル化酵素についての基礎的な研究も行った。ヒストンメチル化酵素SUV420H1がヒストンタンパク質だけでなく非ヒストンタンパク質であるERK1をメチル化することにより、ERKのリン酸化を制御することを発見した。この事からERK1のメチル化がMAPK経路の活性を促し、癌化に寄与していると考えられる(Oncotarget,2015)。
2: おおむね順調に進展している
当該年度は1.婦人科癌(卵巣癌、子宮体癌)検体におけるヒストンメチル化酵素、脱メチル化酵素の発現解析、2.婦人科癌細胞株を用いた細胞増殖試験を研究計画として行う予定であった。まず子宮体癌から研究を開始したが予定通り進行しており、細胞増殖試験まで終了している。今後卵巣癌細胞株も平行して行う予定であるが、当該年度の子宮体癌における研究で実験系が確立されているのでスムーズに研究を進めることができると考えられる。
卵巣癌においても子宮体癌と同様に研究を開始し、ヒストンメチル化酵素・脱メチル化酵素の発現解析、細胞増殖試験まで行う予定である。子宮体癌においてはヒストンメチル化酵素EZH2の機能解析をさらに進めていく。具体的にはEZH2阻害剤を用い子宮体癌細胞株において細胞増殖実験、アポトーシス実験、併用効果のある化学療法探索を行っていく。阻害剤における抗腫瘍効果が認められたならばin vivo 実験も開始する。具体的には子宮体癌細胞株を移植したヌードマウスを用いEZH2阻害剤を投与し抗腫瘍効果を検討する。またヒストン脱メチル化酵素においても子宮体癌にて発現の亢進が認められた3遺伝子について研究を開始する。
それぞれの実験でほとんどミスなく実行でき、研究計画に沿った結果が得られたので当初の予定より試薬、培地、プライマー等の消耗品が少なく済んだ。また前年度に購入した消耗品も併せて使用したので当該年度の使用額が少なく済んだ。
EZH2阻害剤等のメチル化酵素阻害剤・LSD1等の脱メチル化酵素阻害剤の購入、in vivo実験のためのヌードマウスの購入、その他消耗品に使用する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Oncotarget
巻: 41 ページ: 43162-71
10.18632/oncotarget.6351
Br J Cancer
巻: 113 ページ: 1477-83
10.1038/bjc.2015.369
Gynecol Oncol
巻: 138 ページ: 323-31.
10.1016/j.ygyno.2015.05.031
Gynecol Oncol.
巻: 138 ページ: 174-80
10.1016/j.ygyno.2015.04.015
巻: 137 ページ: 538-45
10.1016/j.ygyno.2015.03.053.