マウス虚血部位への血管内皮前駆細胞あるいは間葉系幹細胞自体を注入することにより血流回復についての確認を行ったところ、注入量が増加するとと注入部位に浮腫を来し、むしろ局所の血流の悪化を示すという結果となった。 そのため、それぞれの培養上清を濃縮し上清に含まれるマイクロパーティクルを注入する方法に変更して実験をを行い、カラードプラ―法により比較検討をおこなった。その結果、虚血部位の血流回復が早期になる傾向は認められるものの、血流回復の速度と最終的な回復程度において注入群とコントロール群で有意差を認めるには至らなかった。卵巣の移植においても以上の検証において同様の結果であったため、in vitroの検証として卵巣由来細胞と血管内皮前駆細胞あるいは間葉系幹細胞自体との共培養を行い、増殖速度に変化があるかの検討を行った。しかしながら、いずれも卵巣由来細胞の増殖能において、共培養群とコントロール群で有意差を認めなかった。 以上より、今回使用した細胞あるいは細胞が分泌するサイトカインは卵巣機能回復に関して有意に改善させるほどの機能は有していない、あるいは機能回復に至るには細胞量や分泌量自体が不足している可能性が示唆された。本研究においては局所注入について単回投与で実験をおこなったが、他疾患モデルにおいては複数回投与において有意に血流が回復することが確認されているため、量的な問題が関与している可能性はあることが考えられた。
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