研究課題
本年度,これまでに培養確立した臨床検体由来の子宮体がんスフェロイド細胞(がん幹細胞)の特性解明を目的とし,以下の研究を遂行した。(unpublished data)(1)子宮体がん幹細胞マーカーの同定:in vitroスクリーニング法により,マーカーXを同定した。同マーカーXの差異によりin vitroにおけるスフェロイド細胞の増殖,およびin vivo免疫不全マウスにおける腫瘍形成能の差異ならびに幹細胞因子の発現差を確認した。形成腫瘍は臨床検体と組織学的に差異のない子宮体がん腫瘍であることを確認した。以上の結果より,子宮体がんスフェロイド細胞はがん幹細胞性質を有する事を確認した。(2)マーカーXに基づくがん幹細胞機能:マーカーXの高低により区分した細胞の免疫不全マウスへの移植により形成される腫瘍内におけるマーカーXの発現差異を確認した。(3)マーカーXの機能的意義:shRNA法による発現抑制ならびに阻害剤による抑制により細胞増殖の顕著な抑制が示された。以上より,子宮体がん幹細胞スフェロイド細胞においてマーカーXががん幹細胞マーカーとしての意義とともに機能的意義を有することを確認した。(4)網羅的遺伝子発現検証:子宮体がん幹細胞特異的発現遺伝子の検証を目的に,マーカーX発現差で区分したスフェロイド細胞における網羅的遺伝子発現解析をmicroarray法を用いて施行した。さらに幹細胞因子の子宮体がんにおける機能的意義を検証する目的に,子宮体がん細胞株を用い,幹細胞因子のひとつであるSOX2発現の抑制による細胞増殖・腫瘍形成の差異を確認した。また子宮体がんにおいて,p21がSOX2の標的因子であることを確認した。(Yamawaki et al., Cancer Science 2017)
3: やや遅れている
前年度からの継続により,子宮体がん幹細胞の幹細胞性質の検証ならびに機能的意義の検証の遂行に時間を要,平成27年度に予定していた「ヒト卵巣がんおよび子宮体がん幹細胞における幹細胞特異的因子の役割の検証」実験を今年度施行した。
網羅的遺伝子発現解析により同定した子宮体がん幹細胞特定的発現遺伝子群ならびにシグナル活性の意義について検証する。またこれら発現・活性が卵巣がん幹細胞における機能的意義の有無について検証し,婦人科悪性腫瘍におけるがん腫特異的な制御機構の有無について確認を行う。
国際学会への参加を取りやめたために余剰額が生じた。
次年度交付助成金とあわせて抗体や試薬などの購入に充てる予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Cancer Science
巻: 108 ページ: 283-289
10.1111/cas.13196