研究課題
予後不良の在胎28週以前の早産の主要因として、子宮内感染に基づく絨毛膜羊膜炎(CAM)が知られている。また腸内細菌叢、腟内細菌叢のアンバランスがCAMの一因と考えられているが、直接的な証明は未だなされていない。①羊水ならびに胎盤、臍帯血の病原微生物の高感度遺伝子検査と現行の細菌検査法との比較評価:迅速高感度同定システムの運用は順調であり、実用的である。独自開発したTaq DNA Polymerase、masked Primer Dimer法、One Step nested PCR法を組合せ、細菌・真菌・マイコプラズマ・ウレアプラズマそれぞれのユニバーサル・プライマーを設計して、病原微生物それぞれを検出する高感度・高特異度な遺伝子検査法を構築した。②羊水中サイトカインと羊水中病原微生物との関連性、子宮内炎症の程度と羊水中の病原微生物の種類、菌体量との相関の検討:Ureaplasma/Mycoplasma感染例で、特に細菌感染も重複している例では、感染微生物陰性例に比べて有意に羊水中IL-8高値で、CAMⅡ度以上が高率であり子宮内炎症が強いと示された。新生児予後についても重複感染例では、微生物陰性例に比べて有意にNICU入院率が高く、新生児重篤疾患罹病率も高かった(Yoneda N et al, Am J Reprod Immunol 2016;75(2):112-25)。適切な抗菌薬治療により妊娠期間の有意な延長を認めた(Yoneda S et al, Am J Reprod Immunol 2016;75(4):440-50)。③切迫早産例,早産例,正常妊婦より便,腟分泌物を採取しDNAを抽出後、T-RFLP法を行い、末梢血の制御性T細胞をフローサイトメトリーで検索する。④頸管無力症の感染微生物の検討と予後不良症例のリスク因子の検討。現在症例を蓄積中である。⑤Amniotic fluid sludge例での羊水中病原微生物の検討:AFSの有無により、羊水中病原微生物の検出率に差はなかったが、子宮内炎症と関連することがわかった。現在、論文作成中である。
2: おおむね順調に進展している
迅速高感度同定システムを運用し、早産では羊水中病原微生物のうちマイコプラズマ、ウレアプラズマと細菌の混合感染例が周産期予後不良で子宮内炎症が高いことについて、論文報告した(Yoneda N et al, Am J Reprod Immunol 2016;75(2):112-25)。また、迅速高感度PCR法により病原微生物を検出し、適切な抗菌薬治療を行なった場合、有意に妊娠期間を延長することを論文報告した(Yoneda S et al, Am J Reprod Immunol 2016;75(4):440-50)。その他の検討については、症例を順調に蓄積している。
迅速高感度PCR法により病原微生物を検出し、適切な抗菌薬治療を行なった症例において、分娩時に羊水、胎盤、臍帯血の検体を採取し治療効果を判定する。予備実験では、適切な抗菌薬治療により50%の症例で胎盤の病原微生物が消失していた。今後は定量的PCRを行い、治療効果判定をしていく。早産例で、整腸剤投与による介入を従来のトコリーシスに加えて行い、妊娠延長期間を検討する。Probioticsは腸内細菌の正常化に効果を示し、安全性は高く倫理的なハードルはなく、すでに富山大学倫理委員会で承認を得ている。臨床症例を増やすことにより、腸内細菌叢の改善が早産予後(妊娠期間の延長と新生児予後)の改善につながるかを検討する。検査システムが軌道にのれば全国の周産期センターと連携し、羊水中や新生児の感染症の有無を当院で行い、臨床データを集積していく予定である。また腸内細菌叢に関しても全国の施設と連携し臨床データを集積する。
旅費が想定より少なかったため、次年度に繰り越しした。
旅費として算出する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) 図書 (5件)
Am J Reprod Immunol
巻: 75(2) ページ: 112-25
1111/aji.12456.
PLoS One
巻: 18(6) ページ: e0129032
10.1371/journal.pone.0129032.
Am J Reprod Immunol.
巻: 73(6) ページ: 568-76
10.1111/aji.12484