研究実績の概要 |
加齢に伴う卵子や受精卵の品質劣化(卵子老化)は、晩婚化が進むわが国において非常に重要なテーマの一つであるものの、その原因や予防方法はいまだよくわかっていない。平成26年度までの研究により、①受精卵膜上で塩化物イオンチャネルとして働くグリシンレセプターが新たな因子候補であること、②マウスやウシ受精卵でグリシンレセプター作動薬を作用させると発生率が向上することを示した。 そこで平成27年度、平成28年度は前回の計画をさらに深化させ、①卵子形成および受精卵の胚発生時におけるグリシンレセプターの発現プロフィールおよび電気生理学的特性を詳細に解析する、②CRISPR/Cas9を用いて、特定のα, βサブユニットを欠損したグリシンレセプター欠損モデル受精卵の作製し、胚発生を解析する、③内因性のグリシンレセプターを欠損し、代わりにレーザー光依存的に塩化物イオンチャネルを開口することができるハロロドプシンを発現したモデル受精卵を作製し、人為的な塩化物イオンの流入で胚発生を制御できるかどうかを確かめることを目指して研究を行った。 その結果、①受精卵膜上で発現しているグリシンレセプターαサブユニットが、他の領域ではあまり見られないα4サブユニットであることを明らかにし、②CRISPR/Cas9を使ったゲノム編集技術により、α4およびβサブユニットを欠損させたノックアウトマウスを作製した。現在、これらのグリシンレセプターノックアウトマウスの解析中である。③一部、光遺伝学操作による実験は出来なかったが、内因性のグリシンレセプターの欠損した受精卵の作製には成功しており、引き続き次年度以降の計画で実施する予定である。
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