研究実績の概要 |
研究目標を「癌幹細胞をターゲットとした治療方法の検討」から、正常細胞中には存在しないウイルスゲノムが発癌につながる「子宮頸癌の新たな治療戦略の検討」に変更している。子宮頸癌および前癌状態 (cervical intraepithelial neoplasia:CIN) における進行度による血中ヒトパピローマウイルス (HPV) 遺伝の real time PCR を用いた検出系を確立し腫瘍マーカーとしての治療効果判定、再発診断へ応用できる可能性の検討を続けている。現時点では、リンパ節転移や遠隔転移を伴う比較的進行した症例では血中 HPV ゲノムが検出されているが、早期症例や CIN 症例でのでの検出にはさらなる調整が必要である。また、HPV 関連癌における、CRISPR/Cas9 システムによるゲノム編集を利用した治療法についての検討を続けた。我々の検討中に、ゲノム編集を用いた癌治療の研究は広く実施されており、発癌にもっとも重要とされる HPV の E6、E7 タンパク領域をターゲットとしたゲノム編集により、in vitro で HPV 陽性ヒト子宮頸癌細胞株の増殖抑制とアポトーシス誘導が可能であることはすでに報告されており (Hu Z,et al. Biomed Res Int. 2014)、近年ではヌードマウスを用いた in vivo 的な成果の報告もあり (Yoshiba T, et al. Oncol Lett. 2019)、より現実的な治療法となりつつある一方で、編集効率を正確に評価する指標として、精密な血中 HPV 遺伝子の計測系が有用となることが期待される。
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