研究課題/領域番号 |
15K20136
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
関谷 龍一郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (40712352)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | PLAGL2 / 上皮間葉転換 / RhoA / Rac1 / 卵巣癌 |
研究実績の概要 |
Pleomorphic adenoma gene-like 2(PLAGL2)はC2H2タイプのzinc finger領域を有する転写因子である。我々はすでにこのタンパク質が卵巣癌細胞の運動能やアクチン骨格の形成に関与することを見出して報告している。 PLAGL2の機能を研究する過程において、我々はMDA-MB-231細胞を用いGFP-PLAGL2を恒常的に発言する卵巣癌細胞を樹立した。しかし発現細胞は時間とともに消失し、その現象はES-2細胞やHEY細胞を用いでも観察できた。これはPLAGL2の発言により、細胞の増殖が静止したか、または細胞死が誘導されたと考えられた。そこでまず、PLAGL2がどのようなタンパク質複合体を形成し、そこに結合するタンパク質を同定し解析するために、同じPLAGファミリーであるPLAGL1、PLAG1についての機能解析を行うこととした。PLAGL2は496アミノ酸からなる転写因子であり、ホモログ遺伝子としてのPLAG1とPLAGL1が存在している。PLAG1はいくつかの癌で変異が見つかり、癌との関連性が示唆されている。また、脂肪が細胞腫、肝芽腫、唾液腺腺腫の多形的な促進に強く関わっていることが報告されている。一方、PLAGL1はp53と関連し、腫瘍抑制因子として作用することが報告されている。 PLAG1、およびPLAGL1のsiRNAを2種類設計し、ES-2細胞を用いて発現抑制を行い、その形態変化及び細胞遊走能の変化を確認した。PLAG1抑制細胞株ではPLAGL2抑制と同様にアクチンストレスファイバーの構築が見られ、細胞形態も間葉系細胞の形態を示した。PLAGL1抑制細胞株ではアクチンストレスファイバーの構築は見られなかったものの、形態はPLAG1と同様に間葉系細胞の形態に変化した。遊走能はPLAG1、PLAGL1抑制ともに有意な低下を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PLAGファミリーであるPLAG1、PLAGL1のsiRNAを作成し、卵巣癌細胞株ES-2を用いてそれぞれを抑制し機能実験を行った。その結果、PLAG1を抑制したES-2細胞ではアクチンストレスファイバーの構築が見られ、細胞形態の変化が見られた。また、細胞遊走能の低下も見られた。次にPLAGL1ではアクチンストレスファイバーの構築は見られなかったものの、細胞形態の変化を認めた。また、細胞遊走能の低下も見られた。 薬剤でPLAGL2の発現を誘導する系においては、2種類のレトロウイルスベクター作成を現在行っており、今後、この2つの異なるウイルスを同時に細胞に感染させ、薬剤セレクションを行い感染細胞を樹立させる予定である。 全体としてはやや遅れて進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
PLAG1、PLAGL1でもPLAGL2と似たような形態および機能の変化を認めた。そのことを踏まえPLAGL2にあるいつくかの重要な領域について、以前作成した変異型遺伝子を用いて、どの領域が転写活性やDNAへの結合などが細胞死の誘導に重要な領域であるか検証する。 薬剤でPLAGL2を発現する細胞を用いてDNAアレイ解析を行う。発現解析を行った遺伝子群を様々な解析ツールを用いて細胞死に関連する遺伝子の発現が変化するかを検討する。また、その遺伝子を発現させることにより細胞死が誘導されるかを明らかにする。そしてPLAGL2と結合するタンパク質を同定し、PLAGL2と共同して細胞死を誘導する因子の同定を試みる。 卵巣癌手術検体において、PLAGL2の発現およびPLAGL2により誘導される関連分子の発現変化について検討する予定である。
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