研究課題/領域番号 |
15K20137
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
内海 史 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (10749261)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プラズマ / 卵巣癌 |
研究実績の概要 |
大気圧プラズマを間接照射の手法を用いて卵巣癌へ応用し抗腫瘍効果についての研究を行った。特に化学療法抵抗性を獲得する悪性度の高い卵巣癌への抑制効果の検証を目的として研究を行った。 ①プラズマ間接照射が卵巣癌細胞のEMT化に対して与える影響の確認:アポトーシスを誘導しない程度のごく弱いプラズマ間接照射を行うことで、腫瘍細胞の播種、浸潤能の変化を観察するためにさまざまな強度のプラズマの間接照射を行い、細胞の接着能、浸潤能を検討しプラズマ間接照射による浸潤能の低下を確認した。 ②癌細胞EMT化によるプラズマ感受性の変化の検討:EMT化したより悪性度の高い化学療法抵抗性である卵巣癌細胞株にプラズマ関節照射を行い、そうでない卵巣癌細胞株との比較を行った。またどういった条件下で抗腫瘍効果が増強するのかを調べるため、様々な条件下で照射を行い検討した。細胞数に反比例し効果が減弱されること、照射する溶液の種類によって効果が大幅に違うこと、Eカドヘリン発現の低い、よりmesenchymalな形態の癌細胞への効果が高いことが確認された。また、TGF-βを使用しEMT様の変化を誘導することでプラズマ間接照射の効果が増強されることが確認できた。 ③プラズマ照射溶液をマウスの腹膜播種モデルに応用する実験系での安全性を調べるために、投与後のマウスの臓器別に染色し形態的変化を観察し安全性を確認した。 ④化学療法との併用:プラズマ関節照射と化学療法の併用効果を調べるため、パクリタキセルとプラズマ照射溶液をヌードマウスの腹膜播種モデルにIPする。そのための予備実験を行った。また、プラズマ効果の要因であると考えられているROSのスカベンジャーであるBSOを対照群に加えるため予備実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vitroでの実験は比較的順調に進行しているが、EMT化を起こした卵巣癌細胞で腹膜播種モデルを作成する際に、本実験の実験系に最適なモデル・条件の設定に時間を要した。また、条件による結果の相違がみられ、十分な結果が得られなかったことから、細胞の種類、数を変更し施行していく過程で時間を要したため遅れが生じている。皮下腫瘍モデルへの変更を考慮し更なる検討を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
プラズマ照射溶液とパクリタキセルの併用について腹膜播種モデルを用いてその併用効果を検討する。また、ROSのスカベンジャーであるBSOのin vivoでの併用も行う。化学療法の併用が思うような結果が得られなかった場合に、プラズマ照射と同様にそのアポトーシス誘導機序にROSの関与が大きいと考えられている放射線照射を行うために準備を行う。また、プラズマ関節照射の効果の検討として酸化還元関連因子の発現など分子学的評価を行う。また、プラズマ間接照射の血管新生へ与える影響を調査するため、VEGFやVEGF-Rの発現についても分子学的、免疫学的に検討する。
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