本研究では非平衡大気圧プラズマによる間接照射の手法を用いて、卵巣癌に対する抗腫瘍効果の検討を行っている。本年度は非平衡大気圧プラズマにより間接照射を行った溶液を、卵巣癌細胞株ES-2によるマウスの腹膜播種モデルに3日間腹腔内投与し、Xenogen IVIS 200 Imaging System を利用して卵巣癌細胞播種の進展を評価した。本研究によりプラズマ間接照射液の腹腔内投与による腫瘍播種抑制効果を確認した。また、マウスモデルの摘出腫瘍の中で特にプラズマ間接照射液が、卵巣癌細胞の腸間膜への播種を抑制する可能性があることを見出した。さらに、同実験系においてプラズマ間接照射液投与により、卵巣癌腹膜播種モデルマウスの生存期間も有意に延長されることを確認した。また、プラズマの抗腫瘍効果のメカニズムの一つとして、Epithelial-Mesenchymal Transitionの制御による効果が予想されており、migration assayや invasion assay、wound healing asseyを利用しプラズマ間接照射液が腫瘍細胞のmigration とinvasionを抑制することを確認した。さらに癌の増殖、浸潤、転移能などに関与しているとされているマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)に着目し、プラズマ間接照射液の抗腫瘍効果に、MMPが関与していることを確認した。 また、MMP-9/2はERK1/2、JNK1/2、p38などのMAPk pathwayに関与しているとされており、プラズマ間接照射液によるMMP抑制にもJNK1/2やp38のリン酸化の制御が関与していることを見出した。
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