非平衡大気圧プラズマの癌治療応用への研究が盛んになってきている。我々はこれまでの研究で特に、プラズマを照射した溶液にも抗腫瘍効果があることを見出している。卵巣癌は早期より腹膜播種を来し、徐々に化学療法治療抵抗性となることが知られている。この卵巣癌の特徴的な腹膜播種にはプラズマを直接照射することが困難であり、プラズマ照射溶液を効果的に利用することに期待がもたれている。 本研究ではまず、より腹腔内環境に近づけるために、ヒト大網中皮細胞から同意をえて得られた腹膜中皮との共培養系を用いて行い、プラズマ間接照射後の変化を腹膜中皮の存在下において確認した。プラズマ照射溶液の選択的細胞傷害効果のため、中皮細胞が障害されないレベルの濃度のプラズマ照射溶液を投与し、2時間ごと24時間後のES2細胞の評価を行ったところ、卵巣癌の細胞株であるES2の接着は減少した。この実験系を用いて、より生体内の環境に近い状態での細胞障害性作用を解析した。また、正常細胞・臓器へのプラズマ照射溶液の影響を評価するため、プラズマ照射溶液をヌードマウスに腹腔内投与し、各臓器への障害を病理学的に評価したところ、正常臓器の細胞へは大きな障害を認めなかった。 我々はこれまで、卵巣癌細胞株ES-2によるマウスの腹膜播種モデルに3日間腹腔内投与し、卵巣癌細胞播種の進展を評価した研究によりプラズマ間接照射液の腹腔内投与による腫瘍播種抑制効果を確認しており、人への臨床応用に期待がもたれる。
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