現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
用いているマウス卵巣がん細胞株ID8による腹膜播種モデルにおいて高発現かつ卵巣癌患者でも高発現している可能性がある液性因子もしくはレセプターを、樹立するsub-cloneの強制発現因子とするべくスクリーニングを行った。卵巣癌患者で高発現していることが既知の因子では十分な差が得られなかったことから検討因子を順次広げていく過程で時間を要したため遅れが生じている。IL-33については卵巣癌での報告はまだ限定的であるものの、mRNAレベルおよび蛋白質レベルのいずれにおいても高腹膜播種株で高発現であることが確認されたため、同因子についてさらなる検討を行っていく予定である。 すでに樹立したsub-clone株(ID8-T6およびID8-VEGF)のMonoclonal modelにおいては、腹水貯留が確認できる時期、終末期と予想される時期の把握ができたため、腹水や血液、播種巣の回収を行っている最中である。しかし、比較対象である親株ID8については腹膜播種形成までに3か月超と時間を要してしまうため、腹腔内免疫微小環境に着目した解析への着手が遅れている。 抗がん剤治療が腹膜播種免疫環境およびがんのHeterogeneityに及ぼす影響の検討として、抗がん剤(paclitaxel, cisplatin, gemcitabine)耐性株の樹立を試みているが、十分な抗がん剤耐性の違いを持った各種株の樹立には至っておらず遅れの一因となっている。 マウス卵巣がん細胞株HM-1においても同様な腹膜播種モデルおよびsub-clone株の樹立を計画しているが、並行して遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
マウス卵巣がん細胞株ID8を用いた腹膜播種モデルの検討からスクリーニングされたIL-33はIL-1ファミリーサイトカインの1つでありalarminとしても知られているが、卵巣がんにおいては未だ十分な解析がなされていない。そのため、卵巣がん腹膜播種モデルにおける機能解析をIL-33強制発現株ID8-IL33およびIL-33抑制株ID8-T6-shIL-33を新規に樹立し継続する。ID8-IL33およびID8-T6-shIL-33株のin vitroでの増殖能を確認後に、in vivoでの腹膜播種形成能を確認する。 腹腔内微小環境の検討として腫瘍細胞における炎症・免疫関連因子の発現および、腫瘍細胞以外の微小環境における免疫細胞(CD8:killer T細胞, CD4:Helper T細胞, CD4+GCD25+Foxp3+:Treg, CD11c:樹状細胞, F4/80:マクロファージ, CD11b+Gr-1+:MDSCなど)の差異について、FACSおよび免疫組織染色を行い比較検討する。併せて免疫細胞以外のがん間質構成(線維芽細胞や血管内皮細胞、細胞外基質など)の差異についても病理組織学的に検討する。 IL-33関連株については、さらに蛍光蛋白質(ZsGreen1)を同時に遺伝子導入する予定である。そのため、Monoclonal modelの解析後にはIL-33関連株と親株もしくは他のsub-clone株とを腹腔内接種するDiclonal modelでも検討を行う。
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