研究実績の概要 |
1. 卵巣がん腹膜播種形成過程における腹腔内免疫環境とがん細胞の相互作用 2. 抗がん剤治療が腹膜播種免疫環境及びがんのHeterogeneityに及ぼす影響 上記2点の課題を解明すべくマウス卵巣がん細胞株の腹膜播種モデルを用いて研究をすすめた。 Heterogeneityを有するマウス卵巣がん腹膜播種モデルの構築のため、マウス卵巣がん細胞株ID8を基にsub-clone細胞株として高腹膜播種転移能を獲得したID8-T6、VEGF高発現株、抗がん剤(PTXおよびCDDP)耐性株を樹立した。sub-clone細胞株ごとの増殖能、遊走能といった細胞機能実験を行った。ID8親株とID8-T6のin vitro培養細胞およびin vivoで形成された腫瘍組織塊を検体としてそれぞれ回収し、DNA microarrayを施行した。培養細胞および腫瘍組織塊のいずれにおいてもID8-T6で高発現していた因子の中からIL-33に注目し、mRNAレベル・蛋白質レベルでの発現差のvaridasionを行った。さらに細胞株培養上清および腹水中の分泌蛋白質量にも同様な差を認めることをELISAにて確認した。そのため、IL-33強制発現株ID8-IL-33およびIL-33抑制株ID8-T6-shIL-33を新規に樹立した。樹立したIL-33強制発現・抑制系のいずれにおいてもIn vitroではコントロール株と比し増殖能に有意な影響を及ぼさなかった。 ID8親株、各種sub-clone細胞株(ID8-T6, ID8-VEGF, ID8-IL-33, ID8-T6-shIL-33)のMonoclonal modelにおいては、腹膜播種形成能の確認ができており、腹水や播種組織検体の回収を行った。Polyclonal modelとしては、まずID8親株とID8-T6の組み合わせから検討を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
マウス卵巣がん細胞株ID8を用いた腹膜播種モデルの検討から選別した導入因子であるIL-33はIL-1ファミリーサイトカインの1つでありalarminとしても知られている。IL-33が卵巣がん腹膜播種モデルに対してがん促進的・抑制的のいずれであるのかはまだcontraversialな状況である。引き続き樹立したID8-IL-33およびID8-T6-shIL-33株を用いた腹膜播種モデルで研究をすすめる。 腹腔内微小環境の検討として腫瘍細胞における炎症・免疫関連因子の発現、腫瘍細胞以外の微小環境における免疫細胞(CD8:killer T細胞, CD4:Helper T細胞, Foxp3:Treg, CD11c:樹状細胞, F4/80:マクロファージ, CD11b:MDSCなど)の播種進行状態での差異について免疫組織染色およびFACSを行い比較検討する。併せて免疫細胞以外のがん間質構成(線維芽細胞や血管内皮細胞、細胞外基質など)についても病理組織学的に検討する。また、IL-33強制発現株の系において、腹水中の液性因子の差異を比較するためにLC/MSによる解析を行う。ID8-IL-33株で差のみられる蛋白質に関してvaridasionを行うとともにIL-33との関連性を検討する。 IL-33関連株については、蛍光蛋白質を同時に遺伝子導入する株も樹立する予定である。Monoclonal modelの解析後にはIL-33関連株と他のID8のsub-clone株とを腹腔内接種するDiclonal modelあるいは3株以上のpolyclonal modelでの研究を行う予定である。
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