卵巣癌において、抗VEGF抗体ベバシズマブが使用されるが、治療抵抗性の症例も存在する。薬剤耐性のメカニズムの解明が重要である。 抗VEGF抗体治療による腫瘍免疫の変化を調べるため、HM-1細胞株を用いて作成したマウス卵巣癌免疫正常モデルに対し、マウス抗VEGF抗体による治療実験を行ったところ、治療抵抗性に腫瘍が増大した。フローサイトメトリーを用いて抗体投与後の腫瘍の免疫状態を解析したところ、投与していない腫瘍に比べMDSC(骨髄由来制御性細胞、myeloid-derived suppressor cells)が増加し、一方でCD8陽性T細胞が減少しており、抗腫瘍免疫が抑制されていた。また、抗VEGF抗体投与後の腫瘍において低酸素マーカーであるピモニダゾール陽性領域が有意に多く、抗VEGF抗体治療により腫瘍内に低酸素環境が誘導されることがわかった。サイトカインアレイによると、抗VEGF投与後の腫瘍では、MDSCの誘導因子であるGM-CSFの発現が亢進していた。卵巣癌細胞株においても低酸素培養条件でGM-CSFの発現が亢進した。マウス卵巣癌モデルに対し、抗GM-CSF抗体と抗VEGF抗体の併用治療を行ったところ、有意に腫瘍縮小効果を認め、腫瘍内MDSCも有意に減少した。 以上より、抗VEGF抗体投与により低酸素環境に暴露された腫瘍細胞がGM-CSFを産生し、MDSCを誘導することで抗VEGF抗体抵抗性となっていることが示唆された。GM-CSFを標的とする治療は卵巣癌における抗VEGF抗体耐性を克服できる可能性がある。
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