予後追跡が可能である子宮体癌症例138例を対象とし、診療録より患者の年齢、進行期、組織型、治療内容、予後などの臨床情報を抽出した。手術標本を用いてミスマッチ修復(MMR)タンパクに対する免疫組織化学的検討(IHC)と、パラフィン包埋検体(FFPE)腫瘍組織から抽出したDNAを用いてKRAS/BRAF解析、Microsatellite instability (MSI) test、MLH1 promoter methylation解析、POLE解析を行った。解析の結果、BRAF変異は1例も認めず、KRAS変異は20例(14.5%)であった。MSIは40例(29.0%)に認め、IHCでMMR蛋白発現陰性(dMMR)は41例(29.7%)であった。大腸癌に認めるようなMSIとBRAF/KRASの相関は認めなかった。dMMRのうちMLH1/PMS2陰性が23例(56.0%)、MSH2/MSH6陰性が8例(19.5%)、MSH6単独陰性8例(19.5%)、PMS2単独陰性2例(4.9%)であった。MLH1 promoter methylation解析では、24例(17.4%)にpartial methylationを認め、18例(13.0%)にextensive methylationを認めた。MMR蛋白発現正常(pMMR)群においてもpartial methylationは13例(13.4%)認めたが、extensive methylationは2例(2.1%)認めるのみであった。残りのextensive methylation 16例はMLH1/PMS2陰性であった。MSIと臨床組織像の検討ではnon-MSI群に比較してMSI群で類内膜腺癌G3が多かった。その他の臨床組織像では有意な差を認めなかった。POLE変異は12例(8.7%)に認め、全例non-MSIであった。予後解析では,MSI群とnon-MSI群で有意な差を認めなかった。ただしnon-MSI群のうちPOLE変異群は有意に予後が良好であり、POLE変異群を除くと、MSI群はPFSが良好である傾向があった。また一般的に予後不良である類内膜腺癌G3に限るとMSI群は有意にPFS良好であった(p=0.011)。
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