【目的】早産に伴う高サイトカイン状態は,胎児炎症反応症候群(FIRS)を惹起し様々な新生児合併症のリスクを増大させる.胎盤において,母体由来の脱落膜マクロファージ(Mφ)と早産の関与は報告されているが,胎児由来の胎盤絨毛Mφが来す役割に関する研究は少ない.本研究では,ヒト胎盤絨毛MφとFIRS関連の新生児合併症の関与について検討する.【方法】2005年から2014年までに当施設で経験した妊娠32週以下の自然早産の46例を対象とした.胎盤絨毛Mφの総数ならびにその活性型を免疫組織化学にて検討した.BZ-2解析アプリケーション(キーエンス社)を用いて,絨毛間質面積あたりのそれぞれの陽性細胞数を解析し,新生児合併症との関連を検討した.【成績】平均分娩週数は28週1日(23週2日-32週3日)であった.児の合併症では,脳室周囲白質軟化症(PVL)が6例,脳室内出血が6例,未熟児網膜症が8例,慢性肺疾患(CLD)が10例であった.絨毛間質における汎MφマーカーのIba1,炎症制御に関わる抗炎症性MφマーカーのCD163,CD204の陽性細胞数と分娩週数との相関の検討では,CD163のみに有意に負の相関が認められた(P<0.01).Iba1とCD163陽性細胞数は児の合併症と有意な関連はみられなかった.CD204陽性細胞数は,非CLD群に比べCLD群では有意に減少していた(P<0.01).CD163陽性細胞数を週数と負の相関を示さない妊娠26週以降で検討すると,非PVL群に比べPVL群で有意に減少し(P<0.05),非CLD群に比べCLD群で有意に減少していた(P<0.01).【結論】PVLやCLDを合併した早産児の胎盤絨毛において抗炎症性Mφが減少しており,炎症性Mφ優位の環境がPVLやCLD発症に関連していることが示唆された.
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