研究課題/領域番号 |
15K20151
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
本原 剛志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (10457591)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / 癌幹細胞 / EpCAM陽性細胞 |
研究実績の概要 |
近時、悪性腫瘍の治療抵抗性において、癌幹細胞が極めて重要な役割を果たしていることが報告されている。すなわち、従来の細胞障害性の抗癌剤や放射線治療は細胞分裂、増殖が活発な癌前駆細胞あるいはより分化した癌細胞を標的としているに過ぎず、腫瘍組織の階層性の頂点に位置する癌幹細胞の根絶には至っていないことが窺われる。 上皮細胞接着分子(EpCAM)は細胞接着に関与するI型膜蛋白であり、正常の組織幹細胞ならびに癌幹細胞との関連性が示されている。われわれがこれまでに行った研究の結果、各種遺伝子導入を用いた卵巣癌幹細胞マウスモデルの樹立に成功し、EpCAM陽性の卵巣癌細胞が癌幹細胞としての特性を有していることを新たに見出した。さらに、臨床検体を用いた解析の結果から、EpCAM陽性の腫瘍細胞は従来の抗癌剤に対して抵抗性を示すことが明らかに皿されたことから、今後はこれらEpcAM陽性の細胞集団を標的とした新たな治療戦略の開発が重要であると考えている。 EpCAM陽性細胞を標的とする分子標的薬であるAdecatumumabは、卵巣癌幹細胞を標的とした新たな治療戦略として有望である。われわれが樹立した卵巣癌マウスモデルやヒト卵巣癌細胞株に加え、卵巣癌の臨床検体を用いることで、各種in vitroならびにin vivoの実験系によって、EpCAM陽性の卵巣癌幹細胞に対するAdecatumumabの治療効果について解析を行う。最終的に、われわれはEpCAM陽性の卵巣癌幹細胞を標的とした分子標的薬による新たな治療戦略の開発を目的としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
近年、卵巣癌においてEpCAMは癌幹細胞マーカーとして機能していることが明らかにされているが、その中で特に抗癌剤治療抵抗性に関与している可能性がある。今回われわれが行った解析の結果では、ヒト卵巣癌細胞株を用いたin vitroでの検討において、抗癌剤を添加した群ではEpCAM陽性細胞の割合が増加するといった現象が見出されれた。そこで、われわれは抗癌剤誘導性のアポトーシスとの関連性について検討を行った。Western blottingにて、アポトーシス関連蛋白を網羅的に解析することで、EpCAM陽性の腫瘍細胞が抗アポトーシス作用を有し、それらのメカニズムを介することで、抗癌剤に対して耐性を示すことを新たに見出した。 今後は、さらに抗がん剤耐性機構について、分子レベルでの詳細な解析をすすめていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに行った解析の結果から、EpCAM陽性の卵巣癌細胞が抗がん剤誘導生のアポトーシスに関与していることが見出されたため、今後は従来よりその関与が示されているPI3K/AKT/mTORシグナル伝達経路におけるEpCAMの機能解析を計画している。予備実験においては、EpCAM陽性細胞が、それらの伝達経路を活性化する可能性が示されており、今後の詳細な解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年4月に発生した熊本地震のため、建物、実験装置や機器の被害があり、計画が遅延した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に実施できていない実験と、平成29年度の研究計画を行うための実験器具および実験試薬の購入費等として使用する。
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