研究実績の概要 |
〈目的〉前年度までの結果で原因不明不育症患者の妊娠初期子宮頸管粘液中のカテプシンG(CTSG)の発現が流産群特に絨毛染色体正常流産群で有意に高値であり、妊娠初期CTSGの上昇が染色体正常流産の予知因子となる可能性が示唆された。一方、CTSGによって活性型となるIL-33に関しては妊娠初期子宮頸管粘液中で検出され、有意差は得られなかったものの、CTSG同様に絨毛染色体正常流産群で高値である傾向が認められた。そこで子宮頸管粘液中のIL-33がCTSG以外の因子により調節されている可能性を考え、今年度はIL-1受容体ファミリーに属しIL-33のデコイ受容体として機能するST2の発現量を検討した。IL-33/ST2伝達経路は不育症病態、特に着床時の受精卵の選別に重要な役割を果たしているとの報告があるが子宮頸管粘液での発現は未だ報告がない。 〈方法〉IL-33の解析を行った同患者の妊娠初期子宮頸管粘液を用いST2の発現量をELISA法にて測定し、その後の妊娠帰結を流産群(n = 22)と出産群(n = 48)とで前方視的に検討した。更に流産群については絨毛の染色体検査の結果により胎児染色体異常群(n = 14)を対照とし、胎児染色体正常群(n = 4)を対象として検討した。IL-33とST2の発現量の相関関係についても検討を行った。 〈結果〉妊娠初期頸管粘液中ST2は、流産群と出産群の間で発現量の有意差は認められなかった(P = 0.75)。一方IL-33とST2の相関関係については、出産群において有意に軽度の正の相関が認められた(r = 0.37, p = 0.03)のに対し、流産群においては有意な相関関係は認められなかった。 〈結論〉不育症患者の妊娠初期子宮頸管粘液においてST2の発現が認められ、IL-33/ST2バランスの異常が妊娠中の子宮頸管粘液でも検出できる可能性が示唆された。
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