研究実績の概要 |
本研究では,ケモカインシステムに着目し,子宮内膜症におけるケモカインの分子病態生理学的役割を解析している. まず最初にマウス子宮内膜症モデルを確立した.モデル作成方法は以下の通りである.ホルモン動態の差を無くすために卵巣摘出術をレシピエントとドナーマウスともに行った.エストロゲンを毎週投与し,ホルモン動態を同調させ,子宮内膜の肥厚を図った.卵巣摘出術の2週間後にドナーマウスから子宮を摘出し,内膜のみを剥離し,ドナーマウスの腹腔内に移植した.移植後も毎週エストロゲン投与を行い,4週間後に開腹し内膜症様病変と思われる嚢胞性病変が形成されていることを確認した. ヒト子宮内膜症で診断目的に行われるエストロゲン受容体(ER),プロゲステロン受容体(PR),CD10の免疫組織化学染色を行い陽性であったため,マウスモデルの病変は内膜症病変であると確認できた. 宿主におけるケモカインシステムの機能解析のため,遺伝子改変マウス(Ccl3-/-,Ccr1-/-,Ccr2-/-,Ccr5-/-,Cx3cr1-/-)と野生型(WT)マウスで子宮内膜症モデルを作成し,病変形成に差が有るのか,腹水や病変をサンプリングし,Real time(RT)-PCR法,免疫組織化学染色,ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法及びフローサイトメトリー法にて解析している過程である.これらの検討により,候補分子を特定し,阻害剤や中和抗体による治療効果の予備的検討も開始した.
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