研究実績の概要 |
生殖補助医療(体外受精・顕微授精;以下ART)が胚発生に及ぼす影響をゲノムの微細な構造異常あるいはエピゲノム異常の観点から明らかにすることを目指した。対象として不妊治療中の自然妊娠例をを使用した(コントロール群)。85例の流産絨毛組織とその両親のDNAを回収し、Infinium CytoSNP BeadChip (Illumina)でトリオの全ゲノム微細構造異常解析と、67例の流産絨毛組織のInfinium HumanMethylation450 BeadChip (Illumina)での解析が終了した。 ゲノム構造異常を認めない例はコントロール群で3例(8.6%;全35例)、ART群で15例(30%;50例)で、コントロール群が少ないという数的バイアスは否めないがp=0.017で有意差を認めた。ART群にはゲノム構造以外の流産理由が存在する可能性が否定できない、と考えられた。 コントロール群とART群でメチル化率の異なるCpGサイトは認められなかったが、人工妊娠中絶絨毛検体22検体を含めて検討すると、FDR補正後のp<0.05となるCpGサイトがART群で3029個存在し、かつ高メチル化傾向であった。コントロール群にも有意差を認めるCpGサイトは存在したが、1/10以下であった。順位和検定でトップ1000のCpGサイトをannotation file set ENCSR778VCWに当てはめるとTssBiv, BivFlnk, EnhBivに約半数が相当し、stemnessの維持に関わるBivalent modificationのメチル化を高メチル化させる確率が高いことがわかった。この領域は精子では低メチル化領域であり、de novo methylationの異常と考えられる。 ICSIや培養期間の有無でメチル化に差は生じず、培養環境や本来受精卵の有する形質による可能性がある。
|