2017年8月、和歌山において、カニクイザル2号(2013年7月に両側内腸骨動脈をNBCA(n-butyl cyanoacrylate)で塞栓)、5号と6号(ともに2016年7月に両側内腸骨動脈をNBCAで塞栓)の子宮卵巣および内腸骨動脈を摘出した。 ホルマリン保存の後、2017年10月に病理切り出し、HE染色および電子顕微鏡での観察を行った。塞栓後4年経過した2号の子宮動脈と子宮内にはNBCAを認めなかった。一方で5号と6号では子宮動脈内にNBCAを認めた。さらに、血管の断面像では閉塞された血管に再開通を示唆する所見を認めた。 これまで、NBCAで塞栓された血管の組織学的評価はなされているものの、NBCAそのものを検出されてはいなかった。今回NBCAを組織学的に初めての可視化に成功した。さらに、塞栓した子宮動脈の断面を観察すると、塞栓後の血管再開通の像を認めた。塞栓後の子宮への血流は側副血行路が作られることで保たれていると予測していたが、今回の結果から経時的に塞栓された血管も再開通をする可能性が示唆された。 なお、もともと子宮動脈を塞栓する群も作成する予定であったが、カニクイザルの子宮動脈が非常に細く、ヒトで用いるカテーテルでは選択的に塞栓することができなかった。そのため内腸骨動脈から子宮動脈までのすべての血管を塞栓することで子宮動脈の塞栓とした。また、塞栓前と塞栓後に採血検査を行い、エストラジオール値を測定したがすべての結果が測定感度以下となった。検査会社を変更したところデータを得ることができたが、そのデータが信頼し得るかどうか検証中である。
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