研究課題/領域番号 |
15K20166
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
上川 篤志 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究技術員 (60534253)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 卵巣明細胞腺癌 / 細胞競合 / ARID1A |
研究実績の概要 |
ARID1A遺伝子の機能喪失は、多くのがんで頻繁に見られる現象であり、ARID1Aは真のがん抑制遺伝子であることがわかってきた。このうち卵巣明細胞腺癌や子宮類内膜腺癌における高い体細胞変異の保有率からは、ARID1Aの発がん過程における中心的な役割が示唆されている。本研究は、ARID1Aのがん抑制機能の中でも細胞増殖制御と ”細胞競合” という新たな概念に焦点を当てた解析から、ARID1Aの発現が消失した変異細胞がどのように周囲の正常細胞と相互作用しながら腫瘍化していくのかを解明し、婦人科腫瘍における新たな治療法や診断マーカーの開発につなげることを目的としている。 平成27年度は研究計画に基づき、ARID1A発現の有無における細胞競合現象を共培養系で観察するためにレンチウイルスを用いた発現系とCRISPR/Cas9システムを組み合わせた実験系により、細胞の蛍光タンパク質標識およびARID1Aのノックアウトを行い様々な細胞株を作製した。樹立された細胞株は、ゲノムシークエンス、リアルタイムPCRおよびWestern blotによる解析で確実にARID1Aが欠損していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度はタイムラプス観察および今後の研究に使用するための様々な標識細胞株の樹立作業を中心に進めてきた。その過程ではCRISPR/Casシステムによるノックアウト細胞の作製およびそのスクリーニングにかなりの時間を要したもののノックアウト細胞の作製を効率良く進めるプロトコールを確立することができた。しかし、当初予定していたタイムラプス観察の段階までは進めることができなかったため、やや遅れていると判断したが、本年度に作製した細胞株は今後の有用な研究ツールとなる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に作製した種々の蛍光ラベル細胞(ARID1A+、ARID1A-)を様々な比率で共培養したときの様子を生細胞タイムラプスイメージング装置を用いて、ARID1A欠損変異細胞がどのように周囲の正常細胞に排除されるのか、あるいは反対に排除を免れ増殖するのかを動画として観察し、その分子基盤の解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は今後の実験に使用するための蛍光標識と遺伝子変異を施した細胞株の作製を中心に進めてきたが、当初の計画からやや遅れていたこともあり、残高が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は共培養系におけるタイムラプス観察と、ARID1A発現の有無が細胞競合においてどのような変化を与えるのかについてその分子機構を明らかとするための分子生物学的実験およびin vivoにおける評価を行うためのマウス購入に使用する。
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