哺乳動物の卵巣は排卵期にLHシグナルによるCalpainの活性が卵子の物理的な卵巣外への排出(排卵)の誘起に関与していることを明らかとしてきた。さらに、排卵刺激ホルモンによる顆粒層細胞の黄体化にCalpainの活性が関与していることが示唆されるデータが得られ、Calpain活性化抑制剤を投与することによって、黄体化を抑制し、排卵刺激後もエストロジェン合成酵素Cyl19A1の高発現を維持する形質が認められた。さらに、加齢マウスを用いた試験において、Calpainの内因性抑制タンパク質であるCalpastatinの発現が有意に増加していたことから、閉経移行期に認められるエストロジェン過多を誘発するフェノタイプを誘発する原因となると考えられた。まず、顆粒層細胞のCalpainの活性のタイミングのどの時点が黄体化への起点になっているかを明らかにするために、経時的な活性変化を明らかにし、抑制剤によって、2時間ごとに活性を抑制した。その結果、排卵刺激ホルモンによって、Calpainの活性は有意に増加すること、さらに、排卵刺激ホルモン5.5時間以降の活性が、黄体化に必要であることを示唆する結果が得られた。しかし、主要なCalpain1、2ノックアウトマウスの知見を情報収集した結果、産子を得ることが可能な形質であることが明らかとなったことから、Calpain1/2以外のCalpain familyや、Calpain抑制剤で同様に抑制されるユビキチンの関与を疑い、さらに検証をすすめている。 また、成体卵巣の黄体機能を調べるうえで、卵巣を構成する細胞に様々な未知の形質が存在していることを見出した。新たな協力研究者の元、PRDM1-Creマウスを用いて、Prdm1陽性細胞がマウス髄質に存在していることを明らかとした。現在、髄質に存在するPRDM1陽性細胞の単離を進め、細胞の形質を検証している。
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