ヘパリンよりも半減期の長い抗凝固薬としてリコンビナントトロンボモジュリン製剤(TM)による不育症治療の可能性について検討した。【方法】流産率27.5%となる流産モデルマウス(CBA/J×DBA/2)を作製し、妊娠確認後から妊娠マウスに1日1回TM(半減期は20時間)を生理食塩水(生食)に溶解し、15日間皮下投与した。濃度0.1mg/㎏/日とした。TM投与群(TM+)、生食投与群(TM-)、コントロール群(CBA/J×BALB/C)(C)の3群で比較した。投与15日後、解剖し流産率、生存胎仔のサイズおよび体重、胎盤病理所見を検討し、さらに胎盤での血管新生因子の検索をReal-time PCR法で行った。【結果】TM+:6例、TM-:6例、C:6例で検討した。流産率はTM+:10.7%、TM-:28.4%、C:2.1%とTM+で有意な流産率の低下を認めた。(p<0.05)胎仔サイズおよび重量はTM+:2.31cm 1.42g、TM-:2.19cm 1.26g、C:2.36cm 1.46 であり、TM+でサイズ、重量の有意な改善を認めた。(p<0.05)胎盤の免疫染色でのフィブリン沈着を検討したが、TM-でlabyrinth zoneに強陽性を認めたのと比較し、TM+では沈着の改善を認めた。(強度4段階+面積5段階でスコア化(Allred score)し、平均でTM+:2.0、TM-:7.3、C:0(p<0.05))原因検索の為、胎盤検体を用いて、Real-time PCR法を行った。TM+でVEGF、Flt-1の有意な高発現を認めた。有害事象は認めなかった。【結論】TM投与により流産モデルマウスで血管新生因子が改善し、流産予防また胎児発育不全を改善する可能性があり、将来の臨床応用の可能性が示唆された。これらの研究成果について、ScienceDirect Placenta(journal homepage: www.elsevier.com/locate/placenta)に投稿し、2018年3月23日に受理された。
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