研究課題/領域番号 |
15K20169
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
都築 朋子 関西医科大学, 医学部, 助教 (00465642)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 異所性子宮内膜症 / VEGF / SDF-1 / 低酸素刺激 / HIF-1 |
研究実績の概要 |
申請者らはこれまで正所性子宮内膜培養細胞を用いた実験により、月経期から増殖期初期での低酸素環境下で、VEGF産生は低酸素誘導因子(Hypoxia inducible factor; HIF)-1シグナル経路を介して促進されるという、局所における血管新生の制御機構を解明している。本研究では、異所性子宮内膜における血管新生因子の調節機構を明らかにし、いまだ不明な点が多い子宮内膜症の病態生理の解明、さらに血管新生因子やHIF-1をターゲットとした新たな治療戦略へと展開することを目的としている。平成27年度は検体採取を行い、子宮内膜症組織から得た細胞を異所性子宮内膜症細胞として培養し、以下の実験を行った。 1、異所性子宮内膜と正所性子宮内膜における血管新生因子の発現動態を調べた。 (1)通常酸素濃度における血管新生因子の分泌能の解析:異所性と正所性子宮内膜細胞をそれぞれ通常酸素濃度20%で48時間培養し、培養液中のVEGF、SDF-1濃度をELISA法にて測定して、それらの分泌能を比較検討したところ、異所性内膜症細胞は正所性子宮内膜細胞より有意にVEGF分泌量が高く、SDF-1分泌量が低かった。 (2)薬剤による低酸素状態での血管新生因子の解析:培養細胞に塩化コバルトを添加して低酸素状態を作り出し、血管新生因子の変化を確認した。塩化コバルトによる薬剤性の直接的な細胞障害を除外するため、LDHアッセイを用いて塩化コバルトの至適濃度を同定した。塩化コバルト刺激による低酸素状態により、時間依存的にVEGF分泌量が増加し、SDF-1は分泌量に有意差を認めなかった。 2、異所性子宮内膜におけるHIF-1の発現を調べた。塩化コバルトを添加培養した子宮内膜症細胞から抽出した蛋白を用いてウエスタンブロット法にてHIF-1の発現を確認し、HIF-1αの発現ピークが培養6時間後であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の前半は、研究材料の採取や採取した組織からの異所性子宮内膜症細胞の分離培養を行った。細胞へのホルモン治療の影響を除外するために手術前6ヶ月以内にホルモン治療を受けていない患者からのみ組織を採取したため、当初予定していたより検体採取に時間を要した。平成27年度後半は、得られた細胞を用いて、研究実績の概要に記した実験を行った。異所性子宮内膜におけるVEGF発現増加と、その転写因子であるHIF-1の発現を確認し、計画は順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は引き続き異所性子宮内膜症細胞を用いて、HIF-1が直接的にVEGFなどの血管新生因子を制御するかを、HIF-1阻害剤エキノマイシンを同時添加して検討する。もしHIF-1の阻害効果が確認できないときには、セレコキシブ(COX-2抑制剤)、17-AAGなどの各種HIF-1阻害剤による血管新生因子の変化を解析する。さらに現在、子宮内膜症治療の薬物療法として用いられているプロゲスチン製剤とHIF-1阻害剤による血管新生因子の分泌能への影響を解析し、子宮内膜症治療薬となる可能性を検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験は順調に進んでおり、次年度はHIF-1の血管新生因子への制御機構を解析する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
そのためHIF-1阻害剤やELISAキットを購入するために予算を次年度に使用する計画である。
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