研究課題
多施設より供与して頂いたマウス由来扁平上皮癌細胞株におけるMHC分子およびPD-L1の細胞表面上の発現を検討したところ、MHCクラスIの発現は確認できたが、PD-L1の発現は確認できなかった。しかし、培養液中にIFN-gammaを添加したところ、細胞表面にPD-L1分子の発現を認めたため、この扁平上皮癌細胞株をマウスに皮下移植し、腫瘍が確認できたところで、poly-ICと抗PD-L1抗体を併用した治療を行った。しかし、治療群ではコントロール群と比較して有意な抗腫瘍効果を認めなかった。皮下腫瘍を摘出してホルマリン固定パラフィン包埋切片を作製したところ、形態学的には扁平上皮癌で間違いなかったが、免疫染色による検討ではPD-L1の発現は認められなかった。以上より、今回使用した扁平上皮癌細胞株はPD-L1を発現していない(もしくは発現が弱い)ためにpoly-ICと抗PD-L1抗体の併用療法の効果が出なかった可能性が考えられ、今後は別の細胞株を用いて検討を続けていく予定である。同時進行で行っていた頭頸部悪性腫瘍患者におけるPD-L1およびPD-1の発現検討に関しては、鼻性NK/T細胞リンパ腫において患者組織にPD-L1が強く発現していること、本疾患患者の36%で腫瘍組織中にPD-1陽性のリンパ球が浸潤していること、患者血清中に可溶性PD-L1の発現が認められ、その値は健常人と比較して有意に高いこと、可溶性PD-L1高値の患者群は低値の患者群と比較して有意に全生存率が低いことが明らかとなった。上記の成果はCancer Immunology, Immunothrapy誌に論文として掲載された。(Nagato T. et al. Cancer Immunol Immunother. 2017 Mar 27. Epub ahead of print.)
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Cancer Immunology, Immunotherapy
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doi: 10.1007/s00262-017-1987-x.