研究課題/領域番号 |
15K20177
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
川嵜 洋平 秋田大学, 医学部, 助教 (00644072)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 放射線感受性 / CD98 / 癌幹細胞 / CD326 |
研究実績の概要 |
CD98は分子量85KDa以下の1回膜貫通型糖タンパク質であり、アミノ酸トランスポーターの役割を担っている。CD98が頭頚部扁平上皮癌における癌幹細胞マーカーであるという報告が2013年になされ、様々な臓器の癌でも強発現をしていると、予後不良であり、予後因子として使用できる可能性がある他、治療のTargetとなりうる。Ho-1-u-1, Sa3, HSC2, HSC3, HSC4の5種類の頭頚部扁平上皮癌細胞株を用いた。60Gy放射線照射し、CD98とCD326の発現の変化をみた。CD326(EpCAM)は細胞接着分子の一つで、細胞内シグナル・遊走・増殖・分化などの役割を果たすと言われる。また、近年ではCirculating Tumor Cellを検出するためのマーカーとして使用されている。放射線照射後の細胞株は、どれもCD98をほぼ100%と強発現していた。最も大きく動いたのは、HSC2とSa3であった。HSC2はCD98陰性が43%、CD98陽性が53%であったものが、照射後はCD98陽性が98.9%となった。また、Sa3はCD98陰性が31%でCD98陽性が68%であったが、照射後は98.8%となった。興味深い事にどの細胞株もCD98とCD326が広く分布していたが、照射後は一つの細胞集団に凝集されていた。半流動培地で細胞を培養すると、照射後のものはより多くて大きなスフェロイドを形成できたこと、遊走能が亢進していたことから、CD98の強発現が悪性度に深く関与していることが示唆される。また、放射線耐性を持った細胞がCD98強陽性の均一な細胞集団を形成していることから、CD98が放射線感受性のマーカーとしても使用できそうな事が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CD98とCD326の発現を5つの細胞株で照射前・照射後で確認できた。中でも興味深い細胞株は照射前のSa3とHSC2である。Sa3はCD98陰性とCD98陽性に大きく2つに分離できる。また、HSC2はCD98陰性CD326強陽性、CD98陽性CD326陽性、CD98弱陽性CD326弱陽性、CD98強陽性CD326弱陽性の4つの集団に分離可能である。
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今後の研究の推進方策 |
照射後の細胞はスフェロイドを作りやすく、遊走能も亢進している事から、造腫瘍能と転移能が亢進していると予想される。Sa3とHSC2の2つの細胞株に絞って、SCIDマウスに同所移植、尾静脈に移植して造腫瘍能と転移能を調べる。また、Sa3とHSC2をSortingしてCD98やCD326がどのような性質を持つのかを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体や実験キットは予定通り購入したが、SCIDマウスの実験までは到達できなかった事が大きいと考える。
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次年度使用額の使用計画 |
速やかに適切な移植細胞数やマトリジェルの量などを算出し、移植実験にとりかかる。
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