研究実績の概要 |
HO-1-u-1, Sa3, HSC2, HSC3, HSC4の5つの頭頸部扁平上皮癌細胞株を用いて、60Gyの放射線照射を行った。5つの細胞株とも、放射線耐性株では大きな細胞質を持ったものや間葉系に似た細長い細胞となり、形態学的な変化を認めた。CD98hcとCD326(EpCAM)の発現を調べた。どちらも癌幹細胞のマーカーとして候補になっているものである。放射線耐性株ではほぼ全ての細胞でCD98hcが陽性となった。CD326の発現に有意差は認められなかった。放射線耐性株ではCD98hcの発現が亢進していることは明白であった。また、無血清半流動培地で5つの細胞株を培養した。その結果、放射線耐性株ではより多くの大きいColonyを形成することができた。このことは放射線耐性株には癌幹細胞が多く含まれていることがわかる。更に無血清状態で、Migration Assayを行った。放射線耐性株では無血清状態でも遊走能が亢進していた。更にかねてより、頭頸部扁平上皮癌の癌幹細胞マーカーとされるCD44variantも調べた。CD44s陽性細胞が照射後に減少することは以前報告したが、今回、CD44v9の陽性細胞が放射線耐性株では有意に増加していた。CD98hcとCD44v9の陽性細胞が増加することでxCTやLAT1などのアミノ酸トランスポーターの増加と安定化が起っている可能性が示唆され、このことが酸化ストレスや細胞死からの回避と密接に関与していると考えられる。 CD44v9の発現亢進という事実が明らかになった為、放射線耐性に寄与するのはCD98hcだけでなくCD44v9も関与していると思われる。CD98hc+CD44v9+細胞をソーティングし、性質を検討したいと考える。癌幹細胞様の性質をもっているとすれば、今後治療とターゲットとなりうる。
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