正常モルモット蝸牛において、RT-PCRを施行し、リン脂質代謝酵素であるジアシルグリセロールキナーゼは、内耳細胞に局在することが判明した。特にアイソザイムであるα、ε、ζが強発現をしていた。ジアシルグリセロールキナーゼは、その酵素自体のキナーゼ活性よりもむしろ他のタンパク質と結合し、他のタンパク質の働きを調節している報告がある。そこで、ジアシルグリセロールキナーゼεの結合タンパクを見つけるために、免疫沈降を行うこととした。まず、pcDNA3-FLAG-rDGKε(全長)およびpcDNA3-FLAG-rDGKε(制御部位のZinc fingersドメインのみ変異プラスミド)を作成した。内耳のタンパク質は免疫沈降を行う量として、不十分であった。そこで、マウスおよびラットの脳神経細胞を可溶化し、それを基質として免疫沈降を行った。また、HEK293細胞を用いて、DGKを遺伝子導入し過剰発現系でも免疫沈降を行った。いずれも電気泳動を行い、銀染色を行った。いずれも、コントロールと比べて、異なる複数のバンドがいずれも認められた。しかし、バンドを切り出し、質量分析を行ったが、新規結合タンパクは見つけられなかった。今後、モルモット内耳細胞を取り出し、タンパク量を増やしての免疫沈降を行う予定である。また、内耳細胞におけるジアシルグリセロールキナーゼの働きについて、小胞体ストレス試薬などの刺激負荷によって、小胞体ストレス応答シグナルやアポトーシスの因子の変化について検討する予定である。
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