研究課題/領域番号 |
15K20182
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
鈴木 猛司 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (20422230)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アレルギー性鼻炎 / 光線力学的治療 |
研究実績の概要 |
本研究はアレルギー性鼻炎に対するアミノレブリン酸を用いた光線力学的治療を開発する目的で行った。 光線力学的治療の最大の合併症は光線過敏症であるため、慎重にプロトコールを検討した後、千葉大学IRBから承認をうけた。世界初のアミノレブリン酸鼻内塗布による光線力学的治療であるため、primary end pointを安全性、secondary end pointを有効性とする第ⅠⅡ相試験とした。有効性を評価するため季節性ではなく通年性の鼻アレルギー患者を対象とした。 通年性アレルギー性鼻炎患者2名に試験を行った。アミノレブリン酸溶液を鼻内に塗布し、波長635nmのLED赤色光を鼻腔内に照射したところ、2名に鼻腔内の痛みを伴った。その他の合併症(光線過敏症・肝機能異常・悪心・嘔吐)は認めなかった。鼻腔の痛みは治療後3日には消失した。治療前後の平均総合鼻症状スコア(水っぱな、くしゃみ、鼻づまり、鼻のかゆみの自覚症状スコア)の比較では、治療3日後までは一時的に鼻症状が悪化し、その後は治療前よりも症状の軽減傾向を認めた。(治療前3日間平均値vs治療1ヶ月後3日間平均値; 被験者1: 4.7vs1, 被験者2: 5.7vs1.7)特に、くしゃみ症状は完全に消失した。日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票を用いた症状スコアも治療1ヶ月後で軽減傾向だった。(治療前vs治療1ヶ月後; 被験者1: 35 vs 5, 被験者2: 14 vs 7) アレルギー性鼻炎に対するアミノレブリン酸を用いた光線力学的治療は鼻症状軽減に効果がある可能性が示唆された。症状が治療3日後まで一時的に悪化する事から、光線力学的治療によって鼻粘膜が一時的にアポトーシスし、その後、正常鼻粘膜の再生により鼻粘膜のバリア機能が復活した事で、アレルギー性鼻炎症状が改善していくのではないかと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究にて、アレルギー性鼻炎に対するアミノレブリン酸を用いた光線力学的治療は鼻粘膜のバリア機能の再生による鼻症状軽減に効果がある可能性が示唆された。一方で、光線力学的治療時の鼻腔の痛みが生じたことから、これを軽減する目的でアミノレブリン酸溶液塗布方法の変更が必要と考え、新たなプロトコールを作成し、千葉大学IRB審査を行い承認された。有害事象の報告と検討および新プロトコール作成・IRB審査に時間がかかったため進捗はやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
アレルギー性鼻炎に対するアミノレブリン酸を用いた光線力学的治療のアミノレブリン酸溶液鼻内塗布方法を変更した新プロトコールに従って、新しい試験を進めていく。鼻アレルギーに対する光線力学的治療の有効性が示唆されているため、症例数を増やし、かつ、安全性の高い新治療を開発する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旧プロトコールの研究成果を英論文および学会発表を次年度に行う予定であるため。また、アレルギー性鼻炎モデルマウスの鼻粘膜が採取困難であるため、アレルギー性鼻炎モデルのモルモットを次年度に作成し、鼻粘膜採取を行う予定であり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
英論文および学会にて成果を発表する。 アレルギー性鼻炎モデルのモルモット作成と光線力学的治療前後の鼻粘膜の検討を行う。
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