当研究ではアレルギー性鼻炎および本態性鼻炎の病態における神経制御の果たす役割を解析し、鼻炎の治療法の進歩に寄与することを目的とした。特に申請者が確立した後鼻神経切断術のモデル動物を用いて、鼻粘膜における支配神経の切断が鼻炎の病態や鼻粘膜組織、鼻汁分泌に及ぼす影響を組織学的、分子生物学的に検討した。 我々はこれまでに、この後鼻神経切断モデルラットの検討で、後鼻神経切断後の鼻粘膜呼吸上皮における神経線維の消失と神経ペプチドの消失を確認している。また後鼻神経切断側ではアセチルコリンの消失により鼻汁分泌が低下すること、後鼻神経切断術がアレルギーモデルラットの過敏症には効果がないことを確認している。 後鼻神経切断術の病態を明らかにするために、後鼻神経切断後の鼻粘膜呼吸上皮における遺伝子発現の網羅的検討を行っところ、後鼻神経切断群では神経の伝達や分化に関する遺伝子群が有意に変動していた。Gene Ontology解析では、鼻粘膜支配神経切断後の神経の変性および再生や、支配神経切断後粘膜における炎症変化を示唆する結果が得られた。 後鼻神経切断後の鼻粘膜の長期変化についての解析では、後鼻神経切断後の長期における鼻汁量の変化及び、鼻粘膜の形態の変化が観察された。後鼻神経切断後の鼻粘膜呼吸上皮はリモデリング様の変化を認めていた。これに対して、この変化の手掛かりとなるような遺伝子の変動は、DNAマイクロアレイおよびリアルタイムPCRでは認めることはできなかった。
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